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珍しい、とは何のことやらと、俺は素っ頓狂な声を出す。
鈴木さんは、いまいち何のことか分かっていない俺に、先程の言葉の説明をするように付け加えた。
「イケメンならだいたいこの話すると何かしら悪い笑み浮かべるんだけど……」
「そうなんですか?」
悪い笑み、要は悪巧みをする顔を見せるということだろうが、イケメンに限って金に目がくらむと、そういう事だろう。
まあ確かに、鈴木さんはそういった点で魅力的ではある。
目がくらんでも仕方が無いと言ってもいいだろう。
俺は興味を示さなかったが。
「……面白いじゃない。月城、だっけ?そういえばあんた年下には見えない顔してるわよね。彼女は?」
「えっ、いませんけど……」
怒濤の質問に俺は一瞬怯みつつも答える。
「じゃあ好きな人は?」
またもや唐突な質問に俺は内心「ええ……」と思いながらも言葉を濁す。
「好きな人……ですか」
初対面の質問じゃ無い気もするが、訊かれてしまった以上何かしらは答えなければならない。
何て返そうか考える時間も無く、鈴木さんは俺の心を読み取ったようにニヤリと話した。
「居るのね」
「え、そうなの月城君!」
ついには俺と鈴木さんの会話を彼女の隣で聞いていた毛利さんも、身を乗り出して会話に混じってきてしまった。
きっとこれはもう逃れられない所まで来てしまっているのではないだろうか。
弱みにならないように今、素直に話してしまうのが吉……か。
「えっと……はい。いるにはいます」
観念した俺は、彼女達の追求を受けることにした。
どうにかして関心を別のものへ移したいが、しばらくは無理だろう。
「へぇ?どんな人なのよ」
「俺なんかには勿体ないくらい素敵な人です……」
決して嘘はついていない。
俺の好きな人物――正確には俺が過去に好きだった人物なのだが、好きだったことには変わりないので許して欲しい。
「……気になるわね」
「鈴木さんも毛利さんも知らない人でしょうし、この先のこと聞いても何も面白くないと思いますよ」
へラっと俺はこれ以上は言えないという含みを込めて話す。
まあ、大体の場合こういうものは名前まで出すことになるのがオチな気もするが、言わないわけにはいかない。
「それもそうね。て言うかなーに?月城。私や蘭のこと名字で呼ぼうとしてるの?堅苦しいわね」
「えっ?」
俺は案外早く引き下がってくれた驚きと、俺の名字呼びが話題転換のキーになるとは思わなかった驚きを声に出した。
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