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***
約束の土曜日。
あの立ち話の後、毛利さんと交換したメールアドレスに詳細な連絡が送られてきた。
待ち合わせはケーキバイキングの会場のホテルに十時。
朝からケーキというのも少々応えるが、その後にも何か買い物をしたいそうでこの時間の集合らしい。
ちなみにそのバイキングは人気で長蛇の列だそうだが、ツテがあるお陰ですぐに入れるらしいので問題はないそうだ。
約束の会場に時間の数分前に着くとまだ誰も居なかった。
ケーキを食べるために並ぶ多くの女性を横目に少し離れた場所で毛利さん達を待つ。
時間丁度より少し前に毛利さんは会場に姿を見せた。
いつも会うときは高校の制服しか見ていなかったため、彼女の私服の姿に、こういう人がモテる人なのだろうな……とどこか納得する。
「ごめん遅くなって、待った?」
俺が先に来ていたからか、申し訳なさそうに毛利さんは声をかけた。
時間通りに来ているのだから特に問題はないし、気にすることもないのに。
「いえ、俺もついさっき来たばっかりなので。ところでお友達の方は……?」
やってきたのは毛利さん一人。
今日は毛利さんのお友達も一緒という話だったが、姿が見えない。
「えっ?ああ、多分もう少しで……」
「ごめ〜ん、ら〜ん!」
遠くから声がした。
毛利さんを呼ぶ、底抜けに明るい女性の声だ。
俺と毛利さんは同時に振り返った。
駆け足で手を振りながらこちらにやってきたのは、茶色のボブカットにカチューシャを着けた女性。
毛利さんに劣らずスタイルも良い。
そして驚くことに、身につけているもののほとんどがブランド品。
この人、お金持ちだな。
……と癖で容姿を頭に叩き込む癖が出てしまったな、とパパッとその思考を取り消す。
その女性は俺の顔から足までをじっくり見てから一言。
「なるほど……」と呟いてから何の抵抗も無しに言った。
「なかなかのイケメン君じゃない。服はイマイチだけど」
「ちょっと園子!」
毛利さんが彼女の発言を咎めるも、服はイマイチという言葉に、俺は少しながら心が傷ついた。
知り合いに頼んで服の選び方を教えて貰おうか、などと考えてしまうほどの。
今の状況、毛利さんと今来た女性はどちらも素敵な服を着ている。
それに対し俺は、いつも通りのパーカー、ジーンズの最強コンビ。
どう見ても不釣り合いだ。
「ああごめんなさい、挨拶がまだだったわね。私は鈴木園子。蘭の大親友で〜す」
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