30.ガールズトークの思惑 ページ30
「ケーキ、ですか?」
平日のある日。
俺は毛利さんとポアロの店の前で立ち話をしていた。
きっと、ポアロの中で話をしてもよかったのだが、中に入ってしまうと毛利さんは必然的に何かしらにお金を払うことを強いられるため、俺が仕事を抜け出して外で会話をしている。
高校生のお財布事情はなんとなくだが分かっているつもりだ。
俺と会うためにドリンク一杯など、俺はそんなに価値のある人間ではない。
その立ち話の中で、俺は毛利さんからとある誘いを受けた。
「そう。次の土曜日に友達とケーキバイキングに行こうと思ってるんだけど、一緒にどうかな?」
ケーキバイキング、と毛利さんは言った。
確か、最近駅前にそのような場所が出来たと、日中流しっぱなしにしている地域情報番組が言っていたような気がする。
それに、アイツに話した俺の情報の一つに、俺の好物はティラミスだとそう言った記憶がある。
毛利さんにそれを伝えた……というのは考えすぎだろうか。
毛利さんは俺の顔を伺うようにこちらを見てくる。
俺は彼女の期待とは裏腹に、「行きます」と即答できずにいた。
「えっと……、お友達と行かれるんですよね?その……何ていうか……、俺までいいんですか?」
先日、毛利さんとは“お友達”の関係になった。
それは俺にとっても嬉しいことで、これからの生活に華が咲いたのも事実。
ただ、なんと言えばよいか。
ここまで良好な関係性になっておいてなお、俺はどうも迷惑なのではないか、と思ってしまっている。
最近、俺という存在はこんな場所に居てはいけないのだと俺の中に居る黒いナニカの声が脳裏にちらつくようになった。
仮初の俺に、そんな資格は無いのだと――
絞り出した言葉に、毛利さんは更に微笑みを増しながら答えた。
その返答は、少々変わったものだった。
「もちろん!むしろ大歓迎だよ。私の友達、イケメンに飢えててさ」
「そ、そうですか……」
イケメン……。俺はそんな部類に入っているのか?という疑問はさておき、毛利さんは先程の俺の思考を取っ払うように、俺のことを大歓迎だと言ってくれた。
彼女の言葉に、俺はもう一度だけ深く考える。
この誘いに乗れば、俺は彼女と深く関わりを持つことになるだろう。
それは俺にとって願ったり叶ったりな事だが、俺は――
「だから、土曜日。どうかな?」
いや、今の俺は月城翔真。
断る理由など――無い。
「……そういうことでしたら、是非。ご一緒させてください」
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