キコエナイ引きこもり少年【名探偵コナン】 (ページ3)

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いや、これは……もしかしなくても姉さんが余計なことを言ったのだろう。
俺は、良いバイト先を知っているわ――と、ある日突然言ってきた姉さんを思い出す。
とりあえず流して聞いてはいたが、気づいたらそのバイトを受けることになり、なんやかんやで面接も受かってしまった。

拒否権はあったが、バイトが出来ることにテンションが上がっていた俺は特に疑いもなくバイト初日まで来てしまっていた。

よくよく考えると、姉さんは俺にこの場所でバイトをして欲しかった、何か理由でもあるのだろうか。

そんな事を頭の中で考えていた俺は、榎本さんが俺の手をギュッと握りしめてくるまで、彼女の言いたいことに気づくことが出来なかった。

「やっぱり月城君のお姉さんの言う通りね……。私に任せて！月城君のお友達づくり、協力するから！」

やはりか……という若干呆れ混じりの言葉をこぼし、俺はお気遣いありがとうございます、とだけ言って榎本さんに微笑んだ。

すると榎本さんは一瞬驚いたような顔をして、あ！とまあまあな声量で叫んだので俺は驚く。
訳もなく俺に近づいてきたかと思うと、

「今のいい感じよ！月城君、表情固いからもっとそんな感じで愛想良く、ね！」

と言って、俺の頬を人差し指で押し上げて無理くり口角を上げてきた。
もっと笑え、という事だろう。

「は、はい……」

これには俺も苦笑いで受け流した。

榎本さんに言われて、俺は外へ出てポアロの看板を表に出し、扉にかかるプレートをOPENに裏返す。
そのタイミングで、ポケットに入れていた携帯電話がバイブを鳴らした。
宛名は姉さんで、『バイト楽しんでね♡ good luck！』とのこと。
後で、榎本さんに何を伝えたのか姉さんに確認のメールでも送っておくか、と俺はため息をついた。

ここで俺は一体何をすれば良いのだろうか。
変な話、姉さんが何も考えなしに俺を使う事はない。
これも何か必要な事……なのだろう。

その何かが気になるところでもあるが、今はそんなことよりもバイトに慣れることが先だ。
正直、これから大勢の人と対面するのはどこか緊張してしまう。
うまく話せると良いが、どうだろうか。

店内に戻ると、榎本さんが作業を止め、神妙な面持ちでどこかを見つめていた。
俺がその視線を追うと、それは店のカウンターの端に置いてある一台の携帯電話に向いていた。