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俺は布団にくるまりながら電話に出る。
「はい、どちら様で」
「起きていましたか。貴方ならもう寝ていると思ったのですが」
聞こえてきたのは俺にとっては嫌味にしか聞こえない言葉に、彼の性格上か余裕のあらわれか、やけに落ち着いた男性の声。
そして、それは俺の苦手な声だ。
これならば無視すればよかったと落胆する。
「ああ、あんたか。どうせ図って電話してきてる癖に。……で、俺になんの用？」
「少し、調べて頂きたい事がありまして」
「貴方の専売特許を押し付けてくるとは、貴方も忙しいんですね」
「ええ、まあ。でも今回は貴方が適任だと思ったので、こういう形で手回ししただけですよ」
それはどうなんだか、という言葉を飲み込み、俺は「はいはい」と適当にあしらう。
すると相手の男は「あっ」と一言。
何かを思い出したように話し始めた。
「そういえば、貴方バイトを始めたらしいですね」
「……どこ情報だ」
なぜこの男が知っている……。と当てどころのない文句を宿し、やや怒り気味で俺は答えた。
「素のあなたがあんな仕事に就くとは……思ってもみませんでした。営業スマイル、頑張ってくださいね」
ふふっと笑いながら言われた言葉、やはり全てが全て嫌味にしか聞こえない。
どうせあんたなら接客なんて余裕でこなしてしまうのだろうな、なんて考えるだけで無駄だ。
「ご丁寧にどーも」
この男も姉さんと同じで俺の素を知る者の一人だ。
どうしてこう皆、俺の解釈が一致しているのだろうか。
俺はそれほどわかりやすい男という事なのだろうか。
「では長話になりそうなので、この辺に。詳細は送りますので、朝までによろしくお願いします」
「は？……おい！」
無情にも電話はそこで切られてしまった。
男の言った『朝まで』という言葉に俺はため息をつき、これは徹夜コースだなと諦めて俺は腹をくくる。
ピコンとパソコンに、電話で言われなかった詳細の諸々が送られてきた。
仕方がないかと疲れた体を起こして愛用のパソコンの前に座る。
「まあ、しっかり報酬は頂くのでね……。朝までに頑張りますか」
あと寸前で俺は愛しの睡眠に漕ぎ着けるはずだったが、今日は長丁場のようだ。
さて……と俺は、ディスプレイに映し出された
「なるほどねぇ、これは俺の方が得意……か」
仕事に集中するためにヘッドホンを着け、そう呟き、俺は目の前のネタに噛み付いた。
Fin.
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