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その後エプロンをつけ、開店までの数十分間である程度の接客の流れを教わる。
今日は研修の為、色々と教わる事が多いはずだ。
俺は主に接客担当らしい。
事前に貰っていたメニュー表のお陰で、どんなものがあるのかは一通り知ることが出来たため心配は無い。
どんな感じでの対応かは、まずは榎本さんの様子を見ながら、それを真似するようにしていこうかと考える。
「いやー、にしても土日のシフト本当にありがたいよ。今日は研修だから、そこまで気負わなくて大丈夫だからね」
「はい、ありがとうございます」
気さくなマスターに背中をポンと叩かれ、前のめりになった俺は眼鏡をクイッと直してそう答える。
年中暇な俺にとっては、平日も休日もあまり関係ない。
面接の時にシフトは基本いつでも大丈夫だと言うと、流れるままに土日にシフトが入った。
それに関して特に問題は無かったので、流されたまま平日のシフトも決めて、面接は終わったのだった。
「にしても……本当に君、十五なの?」
「え?……そうですけど」
マスターがまじまじと俺を見つめてくるので、俺はたじろぎながらも首を縦に振った。
すると今度は作業をしていた榎本さんが、カウンターの下からひょこっと顔を出して、そうですよね!と言ってきたので、俺は無駄な反応はせず大人しく話に乗る事にした。
「やっぱりマスターもそう思いました?月城君、すっごく大人っぽいですよね。最初会った時、高校生とは思えなかったな……」
マスターの言う通り、俺は高校生である。
万年パーカーで、髪も染めていると誤解されやすいダークブロンドの地毛。
その風貌から大学生と誤解されることは多々あった。
以前、大学の近くを通った時にサークルの募集の案内を渡されたこともあるくらいだ。
まあ、確かに姉さんも会うたび「もう少し子供らしくしろ」とうるさい。
これは姉さんだけに限るのかと思っていたのだが、どうやら姉さんは正しかったようだ。
「でもさ、月城君。本当にいいの?せっかくのお休み、高校生なんだし友達と遊んだりとか……」
面接の時、マスターに流されていたのを見ていたのだろうか、榎本さんが俺を心配する目で見てくる。
確かに、普通の高校生なら土日シフトはまずあり得ないだろう。
だが俺は年中暇なのだ。
「あー。俺、インドア派ですし、高校も通信制なのでそういうのは……」
俺がそう言うと、榎本さんは儚げに俺を見つめてきた。
同情してくれている……のだろうか。
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