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1.新人バイト ページ1

第一章


「おはようございます」


ここは米花町五丁目にある喫茶ポアロ。
今日から俺――月城翔真は、ここで新人バイトとして働くことになる。
雰囲気も人柄も悪くない。
初仕事として、ここは最高の環境であった。


「おはよう、月城君。今日からよろしくね」

「よろしくお願いします」

俺は店主(マスター)とウェイトレスの榎本梓さんに挨拶をし、エプロンを受け取る。

服は何でも良いと言われた為、特に気にすることなくパーカーを着てきた俺に、なんとも絶妙な顔をした榎本さん。
もちろんそれは、マイナスの意味合いでだろう。
ラフ過ぎると言われても仕方がない。
本当はもう少しこの喫茶店の雰囲気に合うような服を選べばよかったのだとは思う。
だがそれも今更のこと。
なんにせよ、俺にはパーカー以外の選択肢がなかったのだ。

話は逸れるが、そもそもこのバイトは姉さんが俺に勧めてきた為に仕方なく始めただけであり、俺の意思は微塵も反映されていなかった。
だったら辞めれば良い話だが、俺自身、少しだけ楽しみにしていた部分もある為、面接に受かった時は少しだけ喜んだのも事実。
姉さんからも、気に入らなかったら辞めていいとは言われたが、今のところ俺にその気は無かった。
姉さんが辞めろと言わない限りは続けようと思っている。

だからこそ、きっかけのない限り足の踏み出せない俺に、こうやってバイトをするきっかけをくれた姉さんには感謝するべきであった。


今回、何故姉さんが俺にバイトを誘ってきたのかという事についてだが、それはきっと俺が引きこもりだからだ。

毎日の食事の為の食材や電気機器の買い物以外は一日の殆どを家で過ごす、それが俺の日常であった。
おそらくこのバイトは、少しでも俺を社会と関わらせる為の布石である。
所謂、ありがた迷惑というやつだ。

話を戻すと、その理由から、俺はよそ行きの服を指折りしか持っていない。
その上殆どは姉さんが送り付けてきたもので、自分で選んだわけではなかった。

もちろん俺は服に興味が無い。
つまり、何でも良いと言われれば無難に着れるパーカー以外に選択肢はなかったのだ。

この反応、榎本さんはなんとなくそれをわかっていたのだろう。
どうせ姉さんのことだ、俺が外の世界を遮断して暮らしている(引きこもりである)事を既に伝えてあるに違いない。

2.→



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作者名:izawa | 作者ホームページ:http  
作成日時:2022年7月4日 23時

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