5 ページ27
昼食のおにぎりを開けながら大きくため息をついた。午前中にヘリ要請が2件…久しぶりにこんなに疲れた。
海苔をかじるとパリッとした音がする。
向こう側には藍沢先生が何も食べずにパソコンと向き合っていた。
さっきの山田さんの言葉のせいで藍沢先生の顔を見つめてしまう。
綺麗な顔してるよなあ、今まであまり気にしてこなかったけど…
「そんなに人の顔を見ながら食べて美味いか？」
き、気づかれてた…
少し気まずい気持ちになって誤魔化すように笑う。
「いやあ藍沢先生のお顔を見れるのも今のうちなので見ておこうかなあなんて思いまして」
苦しい言い訳だ…などと思いながらもおにぎりを食べ進める。
「今日は当直だろ。休める時に休め」
そう言うと藍沢先生は立ち上がって扉を開いた。
「お気遣いありがとうございます」
藍沢先生ってほんとたまに鬼教官に思える時もあるけど、基本はすっごく優しいよなあ…
歩いていく後ろ姿を見つめながら思った。
でも、やっぱり鬼教官だから好きになったりはしないですかね、山田さん。
おにぎりを食べ終わり、外来へ向かうかあ、と立ち上がる。
取り敢えず今日はこれ以上ヘリ要請来ませんように。
窓を見ると空は綺麗な青空だった。外に出て気持ちいい空気でも吸いたい。
ゆっくり廊下を歩いていると、ようやく探していた1人を見かけた。
「あ、雪村さん」
雪村さんはバインダーを握りしめてこちらを振り返った。
「桜田先生、お疲れ様です。何か用ですか？」
「お疲れ様です。羽鳥さんがお孫さんのことで喜んでましたよ。よければもっといろんな話を孫にしてくれ、っておっしゃってました」
雪村さんが少し驚いた後にため息をついた。
「でも、私の話なんか正直役に立たないと思います。」
「そうですかね？やっぱり憧れる人からの話は大きいと思いますけど」
「はぁ…」
雪村さんってほんと人と関わるのが嫌いなんだなあ。隣で話していてもひしひしと伝わってくる。
外来の診察室に着いたので雪村さんとは一旦別れて診察室の椅子に座る。
「桜田先生、患者さんお呼びしてもいいですか？」
「はい、お願いします。」
と、顔を上げるとナースが患者さんの名前を呼んだ。
そこには仏頂面の40代の女性が入ってくる。
「お待たせしました、飯田さん」
そう言っても女性は口を開いてくれない。…困ったな
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 559人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
べーちゃん(プロフ) - この物語すごく好きです！！キャラクターもシチュエーションもとてもリアルです！あの二人がメインなのに、他の人もみんなちゃんと出てくるし、主人公とみんなとの関係もとても興味深いです。友達におすすめします！！(o^^o) (2018年9月17日 21時) (
レス) id: 0bf64f6267 (このIDを非表示/違反報告)
吹田(プロフ) - 来夢來都さん» 最初から読んで下さりありがとうございます！手術シーンは自分なりに調べてはいるんですが、かなり不安なのでそう言ってくださると嬉しいです(T_T)ツンデレ名取先生これからもたくさん出していきますね！頑張ります！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: cc397255a5 (このIDを非表示/違反報告)
来夢來都 - 最初読んでからずっと好きです!!文系なのにあんなリアルな手術シーンが書けて羨ましいです…。名取先生のツンデレ？っぷりがすごい好きです。更新頑張って下さい。 (2018年8月4日 12時) (レス) id: 6d1fb143e7 (このIDを非表示/違反報告)
吹田(プロフ) - りりぃさん» わ！とっても嬉しいコメントありがとうございます！(^o^)頑張ります！ (2018年7月27日 10時) (レス) id: cc397255a5 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ(プロフ) - ものすごく“きゅん”が詰まってて大好きです！更新頑張ってください！ (2018年7月26日 6時) (レス) id: b0335d08b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：吹田 | 作成日時：2018年7月19日 21時
