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少し調べたいことがあって、資料室で調べ物をしていた。
あー、やっぱり症例とバッチリあってる。大動脈炎症って…
頭を抱えていると、扉が開く音がした。
「あ、灰谷先生。お疲れ様です」
「桜田先生ここにいたんですね。お疲れ様です」
私は本棚からどいて医学書を読み漁る。
「灰谷先生は何か調べ物ですか？」
「はい。少し症例を調べたくて…」
灰谷先生は本棚の背表紙を指で追っていって、本を探している。
「よければ、手伝いますけど…」
「いえ大丈夫です。桜田先生は今日カンファレンスで話してた男性の検査で忙しいですよね。僕なんか自分に自信がなくて探してるだけですから」
そう返されて、頷く他なかったが、灰谷先生みたいな頭のいい先生が症例を探すなんて。
「今まさにその検査が出るまで時間がありますから、手伝いますよ」
灰谷先生は申し訳なさそうに、患者さんの状態を教えてくれた。聞けば確かに判断に困る状況だった。
私は一緒に本を数冊見繕い、灰谷先生に渡す。
「助かりました、ありがとうございます」
「あの、ずっと思ってたんですけど、私は後輩なので敬語じゃなくても大丈夫ですよ」
私がそう言うと、灰谷先生がこちらを見た。
「でも、桜田先生は僕にとっては先輩です。経験した数も違うし、研修歴だって学歴だって僕より上ですし。
何より…僕が頼りにしてるところあるんですよ。桜田先生のこと」
なんだろう。この感触は。
灰谷先生の言葉と、照れくさそうな笑顔に私はなんとも言えない気持ちになった。
「桜田先生は患者さんとの距離も近くて、優しくて、でも頼り甲斐があって。僕がなりたいフライトドクター像なんです。」
そんな風に思ってもらえるような人間じゃないのに。
「だから、これからも敬語でお願いします」
また頭を下げられ、机に向かう灰谷先生。
私はそっと目を閉じた。
「灰谷先生は、いい人だなあ」
ぽろりと出た私の言葉に、えっと顔をあげる灰谷先生。
「桜田先生！？」
そして、ぽろりと出てしまった涙。
今までのいろんな感情が溶けて、それが染み出したようだった。
灰谷先生が焦って私の方へ駆け寄る。
「どうかしたんですか？」
「いや、なんでもないんです。なんか泣けてきちゃって」
鼻水を啜るとポケットティッシュを出してくれた。
灰谷先生が何かを察してくれたようで、
「ありますよね、そういうこと。なんか泣けること」
なんて言ってくれた。
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べーちゃん(プロフ) - この物語すごく好きです！！キャラクターもシチュエーションもとてもリアルです！あの二人がメインなのに、他の人もみんなちゃんと出てくるし、主人公とみんなとの関係もとても興味深いです。友達におすすめします！！(o^^o) (2018年9月17日 21時) (
レス) id: 0bf64f6267 (このIDを非表示/違反報告)
吹田(プロフ) - 来夢來都さん» 最初から読んで下さりありがとうございます！手術シーンは自分なりに調べてはいるんですが、かなり不安なのでそう言ってくださると嬉しいです(T_T)ツンデレ名取先生これからもたくさん出していきますね！頑張ります！ (2018年8月5日 0時) (レス) id: cc397255a5 (このIDを非表示/違反報告)
来夢來都 - 最初読んでからずっと好きです!!文系なのにあんなリアルな手術シーンが書けて羨ましいです…。名取先生のツンデレ？っぷりがすごい好きです。更新頑張って下さい。 (2018年8月4日 12時) (レス) id: 6d1fb143e7 (このIDを非表示/違反報告)
吹田(プロフ) - りりぃさん» わ！とっても嬉しいコメントありがとうございます！(^o^)頑張ります！ (2018年7月27日 10時) (レス) id: cc397255a5 (このIDを非表示/違反報告)
りりぃ(プロフ) - ものすごく“きゅん”が詰まってて大好きです！更新頑張ってください！ (2018年7月26日 6時) (レス) id: b0335d08b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吹田 | 作成日時：2018年7月19日 21時
