裏腹、恋してる (ページ5)

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side A

色々とバタバタ忙しかった午前中を何とか乗り越え、ようやく昼休憩になった。

食堂で座る席を適当に見繕う。

食べ始めようとすると、前に他の誰かが座った。

…名取先生だ。

「お疲れ」

「お疲れ様です」

名取先生は少し気まずそうにしながら箸を手に取る。

私はぼーっとその様子を見てしまった。

「…何、食べないの。他の救命とは違って、うちはここで食べれるのも貴重なんだから」

「あ、はい」

そう言われて食べない訳にはいかない。私も箸を取って「いただきます」と手を合わせた。

名取先生が麺を啜る音と、私がお味噌汁をすする音だけが2人の時間で流れる。

え、なんか気まずくない？

そんでどうして名取先生は私と食べてるんだろ…

色々と考えながら食べるご飯の味はあまりせず。

名取先生が水を飲んだところでたまらず口を開いた。

「…この病院、食堂綺麗ですね」

何言ってんだコイツ、みたいな顔をしながらも、名取先生は「ああそうだね」と答えてくれる。

そして続けて私の方を見て口を開いた。

「あのさ」

「はい」

「あれれれ？早速いい感じじゃんかー！2人！何々？俺お邪魔かなぁーーー？！？！」

名取先生が何かを言ったが、後ろからの声でかき消される。

振り返るとニコニコ笑顔の藤川先生がいた。

あ、名取先生ちょっとイラッとしてるな？

「…藤川先生、珍しいですね、食堂で食べてるなんて」

「あーそれがさぁ、当直終わりで帰ろうと思ってたんだけどさぁ？うちの奥さんが『冷蔵庫に何にもないから食堂で買ってから帰れ』ってさぁ？いやあ困っちゃうよなあ」

「…へ、へえ…」

名取先生が藤川先生に押されてる。ちょっと面白いな、なんて思った。