裏腹、恋してる (ページ40)

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side 名取

急に動揺してトイレに行ってしまった桜田を追いかけるか悩んだが、俺にそんな資格はないか、とそれは辞めた。

今までの言動からしても、桜田の前の研修先で何かあったのは確かで、桜田にとっては大きな地雷になってるんだろう。

「それで、名取先生は本気なの？」

横峯の言葉にビールを飲むのを止める。

「名取先生ってすぐ女の子取っ替え引っ替えしそうだから。

そんなことしたら私と雪村さんが黙ってないからね？」

「ちょっと私まで巻き込まないでよ」

俺の何を知ってるんだ横峯は。人がどれだけ苦労して告白したか知らないくせに。

俺としても不本意な告白だったんだぞあれは。

色んなことを言いたくなかったがなんとか呑み込む。

「俺は信じてるけどね、名取先生のこと」

灰谷が言った言葉に、俺の視線は彷徨った。

「だって名取先生は、こう見えてすごく色んなことを考えてる人だからさ」

「いやどう見えてだよ」

藤川先生といい、灰谷と言い。

俺の何を知ってそんなことが言えるんだ。

「へぇ～、灰谷先生は色々考え過ぎだけどね？」

「え、そうかな？僕ってそう？」

横峯の言葉に灰谷が焦り気味で俺に聞いてきた。

何を今更言ってるんだこのバカは。

「んなもん誰もが思ってるわ」

「嘘…」

雪村さんも呆れたようにため息を零している。

と、横峯が急に大きな声を出した。

次は何喋り出すのか…

「まさかとは思うけど、Aちゃんに手、出してないよね？」

「出すわけないだろ本当に俺のことなんだと思ってるわけ！？」

「ケダモノ？狼？」

「不器用でプライドの高いバカですかね」

女子の総評を聞き、少し唖然としてしまう。もはや笑えてきてしまった。

ジョッキに残るビールを飲み干し、店員さんに「すみませーん、ビールもう一杯ください！」と叫んだ。

「でも、意外と好きな子の前では慎重だったりして？」

横峯がふざけながら言う。雪村さんが「ちょっとわかるかも」と零し頷いた。

灰谷が真顔のように見せかけて笑いこらえてんのもわかりやすすぎ。

「お前らバカにしすぎだろ人のことを」

「ただいま戻りました～」

「あ、Aちゃんお帰りなさい！」

桜田は俺の方を見て首を傾げてきた。なんだよ…

「バカにされてたんですか？」

「うるせぇ黙れ」

「ひっどーい！やっぱり名取先生は信頼できない！」

女子ってめんどくせぇ。今日つくづく思った。