裏腹、恋してる (ページ38)

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side A

「お待たせしました～」

個室に案内されて、襖が開く。私服の横峯先生、灰谷先生、それに雪村さんが待っていた。

「もー遅いよ二人とも」

「雪村さんだいぶできあがっちゃってるよ？」

え？あの雪村さんが？

驚いて名取先生と二人で雪村さんを見つめる。

「あんま見ないでくださいそこのカップル！」

か、カップル？

「あ、いや、雪村さん？」

「大体病院でイチャコラしてるんじゃないんですよ、病院は恋するための場所じゃないっつーの！」

ご覧の通り、と灰谷先生が苦笑い。

名取先生の顔は引きつっていた。

「何頼む？大体なんでもあるけど」

名取先生が「ビールで」と言った。へえ、名取先生ビール飲むんだ…

「私カルピスサワージョッキで」

「オッケー、すみませーん！」

横峯先生が頼んでくれている間に席に座った。私は雪村さんの隣で、名取先生は向かい側の灰谷先生の隣。

「そう言えばさ、さっきどうして名取先生がAちゃんの電話出たの？」

「さ、さぁ？「告白してた」

サラリと言う名取先生に、凍りつく私。

灰谷先生が飲んでいた烏龍茶を吹き出しかける。

「こ、こくはく！？え、名取先生が、Aちゃんに？」

「ていうか、まだ付き合ってなかったんですね。めんどくさ」

雪村さんの毒舌がいつにも増してすごみを増してる…。

「名取先生、桜田先生のこと好きだったんだ…」

ようやく口の中の烏龍茶が飲み込めた灰谷先生がそう呟く。

「お待たせしました、ビールとカルピスサワーです」

「どうも。ほらカルピスサワー」

名取先生から受け取りお礼を言う。

横峯先生は興奮した様子で、

「それで？返事は！？」と言いながら私を揺さぶってきた。

名取先生以外の視線が私に集中する。

えぇ、この場で言うの…？と名取先生にアイコンタクトを取ろうとするが無視。

「いや、その」

「え！？断ったの？」

「や、断ってはないんですけど」

「じゃあ付き合ったんですね、おめでとうございます」

「そうでもなくて」

「は？」

雪村さんの鋭い眼光が私を貫く。ダレカタスケテ。

「保留だって。色々考えたいらしいよ」

名取先生がスマホを触りながらそう答えた。

「えぇえ、保留？どうして？」

「いや…その、その場のノリで答えるのって失礼かなと」

「別に失礼じゃないと思うけどな～」