裏腹、恋してる (ページ32)

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side 名取

今日は橘先生とヘリ担当だ。その橘先生とすれ違った。

「あぁ、名取。今来栖さんの息子夫婦とお孫さんが来てる。ちょっとだけでも顔を出したらどうだ？」

そう言われても、また神様扱いされても困るんだけどな…

「ええ、まあ、時間があれば行きますね」

「そう言うなよ、息子夫婦がお礼がしたいっておっしゃってたし、せめて桜田か名取。どっちかは顔出せよー」

橘先生はそう言ってスタッフステーションに行ってしまった。

マジかよ…

「お、名取お疲れー」

そこに通りがかったのは藤川先生。いつも通りだ、鼻歌歌ってる。

「お疲れ様です、あの、」

「ん？どうした？」

「波木拓馬くんの経過観察僕がやるんで、桜田に別の仕事頼んでいいですか？」

いつもは快諾する藤川先生の表情が曇った。

「やぁ～、すまん。それはちょっと難しいな」

「え、どうかしたんですか？」

「あぁ…それが色々あってさ。まあなんつーか、俺と桜田だけの秘密？っていうのかな？今中々デリケートな状況なんだよな拓馬くん」

なんだそれ、どういう状況だよ、訳わかんねえ、

つーか、藤川先生と桜田だけ？なんでそんなことになるんだよ。

「わかりました。じゃあ大丈夫です。」

「うん。ごめんな、また解決したら話してやるからさ」

藤川先生は用事があったのか足早に行ってしまう。

俺は俺で急ぎ足で来栖さんの方へ向かった。

「失礼しまーす」

扉を開けると、40半ばぐらいの夫婦と、制服を着た少年がいた。

「橘先生からお話聞いてると思うんですが、名取と申します」

「あ、ああ…！先生がおばあちゃんを助けてくれた名取先生ですか！」

「いえそんな助けたなんて大したことしてませんよ」

いやいやいや、と首を横に振る来栖さんの息子さん。

来栖さんを見ると眠っていた。午前中に検査と言っていたから疲れたんだろう。

「もう一人の桜田先生は？」

「ああ、彼女なら今他の患者の治療をしておりまして、ご挨拶に伺えず申し訳ありません。」

「いいえ、直接お礼したいっていう私たちのわがままですから。それに、色々謝らなくちゃいけないこともあると思いますし」

謝らなくちゃいけないこと？なんかあったか？