裏腹、恋してる (ページ29)

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side A

次の日の朝、また名取先生を見つけた。

「…あ、」

話しかけるか一瞬悩む。

そういえば名取先生、今日はイヤホンつけてないんだなぁ。

そんなどうでもいいことを考えていると、名取先生が立ち止まった。あのいつものスカした顔で振り返って来る。

「昨日も思ったけどさ、桜田の私服って、ザ地味だよね」

「な、地味で悪かったですね！」

「服とかいつもどこで買ってんの？」

急いで名取先生の方へ走っていく。

「しまむらですけど」

「はい予想通り。安上がりな女だなぁ」

名取先生の横に並びながら、笑顔になってしまう自分。

話しかけられて嬉しいと思ってしまった。

これはただ、最初あんなに仲が悪かった名取先生と、少しでも関係を築けたから。

そう誤魔化して名取先生の言葉に素っ気なく返す。

「あ、名取先生にAちゃん！おはよう！」

「横峯先生早いですね！おはようございます」

「はよ。なんだよ、Aちゃんて」

横峯先生が私の隣に並ぶ。

「いいじゃん別に。女同士は女同士で仲良くなってんの。今日も早くあがれたら飲みに行くんだよね～」

「ふーん」

「何？名取先生も入れて欲しい？」

「はぁ？俺は別に…」

エレベーターが止まり、扉が開くと灰谷先生がいた。

side 名取

「あ！灰谷先生は行くよね？飲み会！」

灰谷先生がものすごい驚いた様子でこちらを見る。

「そんなのあったの？！知らなかった…」

「いや俺も知らなかったから。横峯と桜田が勝手に二人で行く予定だっただけだよ」

「あ、そういうことね。僕明日午後からだから全然良いよ」

意外とノリいいなコイツ。まじかよ。

「やったー！」

あぁつーか、そっか。灰谷って横峯のこと…

「これで同期じゃ名取先生だけはぶだね？」

「ですね？」

「確かに」

めんどくさ。何この流れ。

「ほらー、藍沢先生が言ってたじゃない。救命はチームだって。仲良くなるのも大事な過程だよ」

良い風に言ってるけどただ人数増やして楽しみたいだけだろ…

「私、名取先生に来て欲しいなぁ」

「はぁ？」

桜田の一言に反射的に振り返ってしまう。

「ほら名取先生のかわいいかわいい桜田先生まで言ってるんだよー？」

「俺のじゃないし、かわいくもない」

桜田を見るとそれは確かに…と呟いた。

「まぁでも。いいよ、飲み会ぐらい」

俺が言ったと同時ぐらいにエレベーターが開く。

開いた先には白石先生がいた。

俺たち同期が揃ってるのを嬉しそうに見つめていた。