裏腹、恋してる (ページ27)

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side 雪村

来栖さんの点滴を交換して病室を出ようとすると、新人ナース2人が話しているのが見えた。

あのナース今朝の…

「てかさ、救命だからって威張りすぎじゃない？私だって処置できたっつーの」

「ああ、朝のやつ？救命のフェローが出しゃばってナース交換してきたんだっけ？フェローも救命のナースもやる気満々じゃん」

「しかもそのナースも救命の新人。まだ大してフライトナースもやったことない癖にどんだけ自分のこと見て欲しいんだか」

訳の分からない噂を立てようとしていることだけはわかった。

そして、今朝の新人ナースが自分が『できなかった』わけではなくて、私が『奪い取った』ということになっていることも。

しかもナースの分際で先生に出しゃばった発言。

馬鹿馬鹿しい。

「ナース長に報告したらさ、雪村さんは頑張り屋さんだからねえ、だってさ。なんで雪村さんの肩持つのかわかんない」

ほんっとに、馬鹿みたい。

わざと二人を追い抜かしてスタッフステーションに急ぎ足で行こうとすると、暗い廊下で話し声が聞こえてきた。

聞き覚えのある声だった。

「あれ？雪村さん？」

「お疲れ」

そこにはまさに話題の渦中にいた二人。名取先生と桜田先生だった。どう接していいのかわからない。

「…お疲れ様です」

とにかく今は話す余裕が無かった。特にこの二人とは話したくない。

「どうかした？なんかあった？」

どうしてそういうこと聞いてくるのかな、先生とナースは関係ないのに。

私は下唇を噛み、「何でもないです」と伝える。

名取先生は私の奥に人影を見つけて「…なるほど」と呟いた。

それを見た桜田先生がまた余計なことを言う。

「え、何ですか？何かいました？」

「別に。…それより雪村さん、来栖さんどう？」

「ああ、先ほど点滴を変えてきましたが、ゆっくり眠られていましたよ」

そっか、それはよかった、と呟いた後に私の奥にいるナース二人に目線を送った。

「今朝は雪村さんがいなきゃどうなってたか。新人ナースであれだけ冷静でいられるのは雪村さんぐらいじゃないの？」

「別に、大したことないです」

状況があまりわかってない桜田先生が口を開く。

「大したことないなんて言ったら、今朝パニックになっちゃったナースに失礼なんじゃないかな。
雪村さんはかっこよかったよ」

え、この人ほんとにわかってないんだよね？

名取先生が少し笑ってしまう。

「確かに、失礼だよなぁ？」