裏腹、恋してる (ページ17)

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side A

「腹部大動脈遮断しました」

サタンスキーを置いて血圧を確かめる。

下がってはない…が、安定はしない。当たり前だ。

電話先の緋山先生がそう、と答えた。

『それで外傷起因の出血は止まったはず。卵管破裂による出血源は？見えた？』

「それが出血がひどくて…」

見えない、どこにあるんだ…止まらない血を掻き出していくが、キリがない。

どうしよう、血圧ただでさえ低いのに、これ以上出血したら…

救急車に勢いよく飛び乗ってきた誰か。振り向く余裕はなかった。

「桜田！」

「名取先生！？」

『名取！？アンタ、心肺停止の患者放置してきた訳！？』

「違いますよ近くの大学病院に救急車で搬送しました。バイタルも安定してきてたし、薬剤の量にも気をつけるよう言ってあります」

名取先生が血の吸引を手伝ってくれる。

「さっきヘリの中から見ておいたんです近くの病院。すげぇでかい病院だからヘリからでも目視できたんで」

『ああそう。そのトリアージ間違ってないといいけどね。それより卵管の裂けたとこ見えた！？』

「どう？わかる？」

名取先生が言わずとも求めてるところを吸引してくれる。冴島さんのフォローも的確だ。

「………あった」

『摘出は不可能だからしなくていい。一番細い管で止血して。傷がひどいだろうから慎重に』

冴島さんが管を渡してくれた。受け取り慎重に結んでいく。

「多分もう少し子宮側で結んだ方がいい」

「わかりました。結びます」

すぐに顔を上げて血圧を確認した。

「バイタル、安定してきました…！」

『よし。すぐにヘリで運んで。緊急オペの準備しとく。あんたら二人も手伝いなさいよ。』

「了解です。送還します」

一気に手の力が抜ける。よかった、まだ助かる可能性が100ではないけれど。

救急車から柴田さんを運び出す。

すぐにかりんちゃんの乗っている救急車が見えた。

「あ…」

「何、どうかした？」

「すみませんすぐに行くので。緋山先生、白石先生に幼児用ベッドの空きがあるか確認してもらってもよろしいですか？」

『あぁ、赤ちゃんの方ね。確認済み、救急車で翔北に運んで』

「わかりました」

名取先生がなんだ赤ちゃんのことね、と肩の力を抜いた。