裏腹、恋してる (ページ14)

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「交通事故よ。タクシーが、赤ちゃんと母親が乗った車にぶつかったって」

私は緋山先生から救命セットを受け取りヘリに飛び乗った。冴島さんも急いで乗る。

「名取、アンタが行きな」

「でも…」

「でももくそもない！はやく乗りなさい！

大丈夫、やばかったらすぐに駆けつけてあげるから」

白石先生が私たちを見て頷く。がんばって、と言っていたのが聞こえなかったが口の動きでわかった。

ヘリの扉を閉めて上昇していく。

やばい、わかってたけど冷や汗が止まらない。

拳を固く握ってしまう。

「現場の状況は？」

名取先生が消防へ連絡を取った。情報がどんどん流れて来る。

『70代の男性タクシードライバーは胸を強く打っていて心肺停止、現在救急隊が心肺蘇生行ってます。
30代女性は腹痛を訴えてます。意識レベルは1桁バイタル安定してます、赤ちゃんは今のところ問題ありません』

「了解しました。」

救急隊からの連絡を聞いて冴島さんと名取先生が準備を始める。

名取先生が私を呼んだ。

「到着したらまずお母さんの状態を見て。俺はおじいちゃんの方行くわ」

「了解です。お母さん確認したらすぐに赤ちゃんも診ておきます」

「オッケー、あ、骨髄針出しときますね」

強く握っていた拳に乗せられた手のひら。

「がんばろ」

意外な一言に返す言葉を探していると、『現場到着しました！』と聞こえヘリが止まる。

「先生方到着されました！」

「タクシードライバーは？」「お母さんは！？」

冴島さんが私の方を見て「付いて来ます」と言ってくれた。

頷いて案内された車内へ走る。