その喰種、間諜 ページ6
日が沈んで数時間後。私は命の恩人である伯爵の執事、セバスチャンの部屋へ来ている。
まだ日付が変わっていないので「今日の」午後7時頃だ。つまり4時間程前。私が街で慌てふためいていた所を助けて貰ったのだが、私は夕餉を食べずに寝たらしい。部屋に睡眠薬の匂いがあったし、それだろう。
そんな事が出来るのはセバスチャンくらいだ。なぜかと言えば私が喰種だからだ。何かを隠していれば気がつく位の警戒心は持っているし、睡眠薬も先程起きた時のように十分な量を吸い込む前に息を止めることだって出来る。
伯爵からは美味しそうな匂いがした･･･となれば、煮詰めた砂糖のような匂いのセバスチャン、お前だ。
「(赫子で生成した刃と小刀は持っている。有事の時の際の逃げ道、窓の鍵と扉の鍵も確認してある。全てが終わったら後は針と糸で鍵をかけて出ていけばいいというわけだ)」
冷たい床を裸足で進み、執事の寝るベッドに片膝をつく。
試しに上に乗っていた右手に傷を付ければ、想像とは対に容易く傷がついた。
赫子を使うまでもなく傷ついた皮膚を見てAは驚愕した。
「(喰種ではない化け物･･･!!!)」
有り得ない有り得ない･･･何者なのか確かめねば･･･
予定を済ませたのにも関わらず好奇心の混ざった警戒が勝った私はセバスチャンの服を脱がし始めた。
「(体つきは人間と同じ。でもRc細胞の匂いもしなければ小刀の傷もつく)」
「(筋肉の造りも同じ、性器も同じ。･･･！見つけた！！！！そう！手、手の爪の色が違う･･･！)」
そこで我に返り、数十分も経っていたことに気がつく。
慌てて服を元に戻し、窓の鍵を閉め、扉の鍵もそうっと閉めた。
無事部屋に生還した私は睡眠薬を投与された時と同じようにベッドに寝そべり、疲れを取ろうと目を閉じた･･･
そして朝が来る。
「お早うございます。お嬢様――――――·····
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作者名：目ん玉 | 作成日時：2020年10月2日 18時
