その喰種、現出 ページ2
「参った･･･」
タンブルウィードを蹴り飛ばしつつ、深い森を彷徨いながら耐えに耐えてきた弱音を吐いた。
大前提として私、Aは純日本人なのだ。
それなのに現在、引越し先の独逸と思われる地でま、ま、ま･･･迷子になっている･･･
仕方ない。恥など見せれば見せるほど恥になるのだ、何としてでも領へ戻ってやる！
それは他の人間より簡単な事だろう、私は喰種なのだから。
それも、とびっきり美しい･･･ね？
あら？
あらら？
折角街に出られたというのに･･･
何故聞こえてくるのが英語なの？
日本、独逸、英国と、目まぐるしく変化した状況に眉根が寄る。
「･･･っと！･･如何なる時も･･･感情を表に出さぬように。･･･ですね」
総本家月山現当主から頂いた言葉だ。商いは「Poker face」が肝になる。普段から心掛けておいて損は無いだろう。
そして、それによって気持ちが解けた私は周りに目を向けた。
通行人を割って動く馬車に、形の綺麗な服たち、その中の肉たち。声を掛けるのは無難におじさんで良いだろうか。小金持ちな。
「レディ、困っているのであれば聞こうか」
聞こえるは
街に似合わぬ
少年の音
え･･･っ？
「何方でしょうか？」
「僕はファントムハイヴ家当主、シエル・ファントムハイヴだ。そして、こんなところに1人では危険だろう」
「ああ、道に迷ってしまったのよ･･･」
元々計画してした引越し先が英国だった事が生きてきた。少しでも話せるとこんなにも楽だなんて･･･独逸に初めて入った時には耳が壊れると思った。何せ、不要な言葉の選別が出来ないものだから。
「セバスチャン、本当にコイツでいいんだな？」
「ええ。慎重に行きましょう」
ふ、仏蘭西語･･･分からない上にこれ以上言語の種類が増えたらもう無理だ。2カ国語で十分だと思っていた過去を呪いたい･･･。
「セバスチャン、屋敷に」
「御意」
以外にもさ程揺れない馬車の中、ファントムハイヴ伯爵から地名諸々を教えていただいた。
「A、出身は何処だ？英語が丁寧すぎる」
「日本よ。本家はそっちにあるの」
「日本か･･･あまり関わっては来なかったな。Aが居るなら手を伸ばしてもいいか。それと、セバスチャンは日本語が話せるだろうから介してもらっても構わないからな」
「ええ。いつでもお申し付けください」
「助かるわ。何から何まで申し訳ないわね」
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作者名：目ん玉 | 作成日時：2020年10月2日 18時
