179 ページ29
どんなことでも絶対に迷惑なんて思わない。
はっきり言った俺の言葉に
彼女は目を見開いた。
目元に溜まっていた涙が、頬を伝って落ちていく。
「ココく、ん、…わたし…。」
ようやく話してくれそうだ。
重い口を開いた彼女。
絡めていた手を、ぎゅっと握り、言葉を待つ。
「お客様に…、
待ち伏せ…っていうのかな…、されたの。」
彼女はぽつり、ぽつりと
言葉を選びながら話し始めた。
「今日、帰る時、道路に出た所でね…
その、急に手を掴まれて…。
ご、ごはんに行こう、って…手を、引っ張られて…。」
俺は頷きながら、何も言わずに聞いていたが、
彼女の手が震え始めたのに気づき、
優しく抱き寄せた。
背中を撫でると、またポロポロと溢れだす涙。
そして、俺の胸元に頭がもたれかかるように
彼女はゆっくり身体を傾けてきた。
「離してって、言っても聞いてくれなくて…。
ひっ、ぐすっ…。
ニヤニヤした、顔が、
攫われた時の男の、人たちと重なって、
頭から…ひっく、離れなくて…。」
嗚咽混じりに話す彼女の言葉を
聞き逃さないように耳を傾ける。
「仲良く、してる先輩がね、助けて、くれたんだけどね…
ぐすっ…、その人が、送るっ、て、手を差し出してくれ、たんだけど、
怖くて、掴めなかった…。助け、て…くれた人、なのに…、怖いなんてっ…、私、さい、て…」
おそらく言おうとした言葉は、
『私、最低。』
察した俺は、彼女の口を塞いだ。
…キスではなく、彼女の顔を自分の胸元にくっつける形で。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 397人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きりん。(プロフ) - 紫月@ｴﾀﾌｪｱさん» たしかに今回まとめて更新できて、早めにお届けできましたねー。読んでいただきありがとうございます！ (2022年11月6日 2時) (
レス) id: 34dfd6e82d (このIDを非表示/違反報告)
紫月@ｴﾀﾌｪｱ(プロフ) - もう4話終了！？速い、早すぎる((そして、好き (2022年11月5日 23時) (レス) id: 6f5f0e8f06 (このIDを非表示/違反報告)
きりん。(プロフ) - bloodyrose77さん» そんな風に言っていただけるなんて、本当に恐縮です。最後までキュンキュンをお届けできるよう、頑張りますね！ (2022年11月5日 17時) (レス) id: 34dfd6e82d (このIDを非表示/違反報告)
bloodyrose77(プロフ) - ココ落ちの夢小説の中でナンバーワンになりました！言葉に長けてらっしゃってとても、読みやすく尚且つとてもキュンキュンなるお話でした！更新楽しみにしております！ (2022年11月5日 16時) (レス) @page48 id: 1b5535e4ab (このIDを非表示/違反報告)
きりん。(プロフ) - ちいさん» なんてこと…！ありがとうございます！とっても嬉しいです。まだ誰をお相手にするかは決めていませんが、新しいお話もご期待に添えるよう、がんばりますね！ (2022年11月5日 15時) (レス) id: 34dfd6e82d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きりん。
| 作成日時：2022年10月30日 23時
