sympathy 2 (ページ2)

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七緒side

バスに乗ると、雪が降ってきた。

七「通りで寒いわけやわ」

かじかんだ指を合わせて温める。

5ヶ月も経つというのに、あの日握られた熱い手の感触が残ってる。

何度も手を繋いだこともあったのに、キスの感触より、ストレートな言葉より、手の感触が残ってるって不思議。

たっちょんが本気で好きでいてくれてるのがわかったから、恋人のフリを続けることは出来なかった。

きっと、たくさん傷つけてたから。

冷たい窓にコツンと額をつけると、そっと目を閉じて、花火大会の夜を思い出した。

緑「じゃあ、最後の恋人のふりってことで、俺のお願い聞いてくれる？」

西濃川の花火大会に行ってみたかってん。

8月6日迎えに行くから。

少し離れた所でやるそれは県内では1番大きな花火大会で、高校生になると誰もが恋人と行きたいと憧れるものだった。

緑「先に食べるもの買って座っとこ♪結構知られてない穴場な所があんねん」

2人とも浴衣を着て、手を繋いで歩く。

クリーム色の浴衣を着たたっちょんはいつもの数倍かっこ良くて、すれ違う女の人の視線を一身に集めていた。

何でこんなかっこいい人が私を…？

たっちょんなら選り取り見取りやん。

緑「何？何かついとる？」

じっと見つめていると、優しい笑顔で聞かれた。

いつも優しくて、紳士的で、女の子が望む甘い言葉をくれる。

そんな完璧な王子様みたいなたっちょんも素敵だけど、あの部室で見た、余裕のない真剣なたっちょんに、心臓を鷲掴みにされた。

ずっと、章ちゃんが好きだったのに。

今はもう……自分の気持ちがわからない。

七「たっちょんは、私なんかのどこが好きなん？」

緑「どこやろうなぁ？…俺もわからんねん」

七「ふふっ。何それ」

緑「本当わからんねんもん。でも、どんな素敵な子がおっても、俺はAがええねん」

七「……うん」

緑「これから、ゆっくりでええから、俺のこと男として見てみて？いつまででも待つから、今は答え出さんといてや。でも、∞では変わらず仲間やでな。変に避けたりせんでよ？」

七「…ん、難しいな」

緑「俺に悪いって思わんと、惚れた弱みにつけ込んで振り回せばええねん」

打ち上がる花火を見ながら、ぽつりぽつりと話して。

この人を好きになったら、どれだけ幸せだろうと思った。