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恥ずかしいことにダラダライチャイチャしていたら、いつの間にか時間がまあまあ押していて大急ぎで出た。なんと間抜けなことか。もしこんなことで遅刻していたら五条さんに死ぬほどおもちゃにされるに決まっている。
赤信号で車が止まると、建人がはぁ、と脱力して息を吐いた。
「仕事に行きたくない……労働はクソ……」
「また言ってる」
「あなたは平気なんですか」
「そりゃあ今日くらい休みたいけど……無理なものは無理だもん」
「呪詛師になって人間味まで置いてきたんですか?」
「仕事とプライベートの区別がついてるだけです」
建人がムッとした。車内にいるのだから誰にも聞かれやしないのに、内緒話でもするみたいに耳に唇を寄せた。
「私のことが好きで好きでたまらない顔をしているのに?」
「……っ」
「あなたのその顔がずっと見たかった」
そんな顔をしているのかと両手を頬に当てる私に、鼻歌でも歌い出しそうな上機嫌で「十年越しに叶いました」と言ってアクセルをかけた。こんなに機嫌のいい建人、見たことない。もっと早く言えばよかったんだ。ありあまる幸せにちょっと泣きそうになった。
「今日は定時で上がります」
「私もそうする。でも無理しないでね」
「時間外労働は余計な器物損害を生むのでさっさと切り上げます」
ああ、建人ってパッと見インテリ系なのに実はフィジカルゴリ押しのグーパンゴリラだもんね……とは言わないでおいた。
その日の夕方、報告書の提出のため高専に寄ると伊地知くんに会った。「お疲れさま」と手もとの書類を見て苦笑した。そういえば七海は今日伊地知くんとペアだったはず。いないってことは帰ったのかな。
「七海さんなら直帰されましたよ」
「……了解。ありがとう」
そんなに私って顔に出てる?
「七海さんと仲直りされたんですね」
「え?」
「ああいえ、七海さん、最近ずっと調子が悪そうだったんですが、今日は良さそうだったので……下世話でしたね。すみません」
胸がきゅうと詰まって、この後なんて返したか覚えてない。早く建人に会いたい。逸る気持ちを抑えて帰宅すると、悠人のご飯や入浴は建人が済ませてくれていたので、自分たちのご飯もお風呂もすっ飛ばして獣みたいに求め合った。
「あっ、ねぇななみだめ、だめっ、あぁっ……」
「建人」
「っん、けんとぉ」
「ん?」
自分でも驚くくらいの媚びた甘い声が出て恥ずかしい。満足そうな建人の吐息混じりの声の色気が半端ない。真冬の外気に冷やされた体は、建人の体温ですっかり熱い。感情か生理的かはわからないが、泣いてる私を見て涙もそのままに、はっと浅く笑う。
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相沢(プロフ) - Yukiさん» コメントありがとうございます‼️エーーーーーンヤッターーーめっっっっっちゃうれぴーです!!!!ワッ受験生仲間〜!!毎日死にそうになりますが頑張って生き延びましょ〜!!!❤️🔥レッツ限界! (5月26日 23時) (レス) id: 95aead40e8 (このIDを非表示/違反報告)
Yuki(プロフ) - めっっっっちゃ楽しみにしてます…自分も受験生です死にそうです一緒に頑張りましょ🥺 (5月25日 21時) (レス) @page6 id: 4a658d8cff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:相沢 | 作成日時:2023年5月14日 19時