彼がホストだったら……(T.M ver.)-Vol,2-

T.M-57 ページ7

※Aside※

貴くんと付き合い始めて、二週間あまりが経ち、この関係にも段々と慣れ始めた。
最初は恥ずかしくてなかなか抜けなかった敬語も、今は自然となくなっている。
それが二人の距離を縮めてくれたようで、ちょっと嬉しい。

「こんにちはー」
「オーナー、お久しぶりでーす」

そんな中、靴屋さんのオーナーから連絡を受け、私と貴くんは店を訪れていた。
いよいよ、オーダーメイドのパンプスが完成したらしい。
随分と時間をかけて作ってもらった靴が、楽しみで仕方なかった。

「お。お揃いで来たな」

ふわりと微笑んだオーナーが、早速、パンプスを持ってきてくれる。
ピカピカのそれは、とてもシンプルなのにさり気ないワンポイントがあり、上品さを醸し出していた。

「うわぁ……素敵」

思わず呟くと、オーナーが嬉しそうに「履いてごらん」と声をかけてくれる。
ドキドキしながら、ゆっくりと足を通すと、まるでピッタリと吸い付くように、私の足にフィットした。

「すごい……！こんなに履きやすい靴、初めて！」

普段履いている靴との明らかな違いに感動していると、貴くんが私の髪を優しく撫でる。

「うん。よく似合ってる」
「あ、ありがと……」

スキンシップにまだまだ慣れない私は照れくさかったけれど、褒めてもらえたのはすごく嬉しかった。

「このまま、履いて行ったら？」
「そうだね。そうする！わぁー。ホントに軽くて気持ちいい」
「ね？お勧めだって言ったでしょ？」
「うん。ありがとう、貴くん」

私たちの会話を聞いていたオーナーがクスッと笑う。

「随分と仲良くなったみたいだなぁ、二人とも」

その言葉に貴くんと顔を見合わせ、互いに赤くなる。
そうだ。オーナーは何も知らなかった。
つい普段通りに……。
焦る私とは裏腹に、貴くんはにっこりと微笑む。

「俺たち、付き合い始めたんで」

その言葉に、ドキッと胸が高鳴った。
確かにそうなんだけど……彼の口から改めて言われると、リアルっていうか。

「おぉ、そうか。お似合いだな」
「ありがとう。また二人で店来ると思うんで、よろしくお願いします」
「勿論、いつでもどうぞ」

照れくさい報告の後は、オーナーのご好意でお茶をいただきながら、少しの間雑談をして。
貴くんの仕事の時間が迫ってきた頃、お暇させてもらう事になった。
靴屋さんを出て、貴くんは私を駅まで送ってくれる。
今夜は金曜日……一番混雑する日は、さすがの彼も休めないようだ。
ちょっと残念だけど仕方ない。

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