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おつかれっしたー!
みんながダラダラしてるのを横目にさっさと着替える。
「お先に…」やや小さめの声で挨拶をし部室を出た。
お店までの道のりもランニングだと思えば全然辛くなかった。
時刻は19:55。
CLOSEと書かれた看板のドアを静かに開ける。
「ちわっす」
「蛍くーん!!!」
愛想の良い声で迎えてくれたマスター。
「よろしく…おねがい…しマス」
バイトの内容を告げられる。
・床の清掃
・食器洗い
・テーブルと椅子の除菌
「時給は850円+残ったケーキ1個でどうだい?」
「だめです、ケーキは…!」
「2個にする?」
「えっと…ケーキは頑張ったご褒美なので…買いたい…デス」
小学生みたいな理由に恥ずかしさが襲う。
「うちのケーキをそう思ってくれるなんてAちゃんも喜ぶよ、最近はほとんど彼女が作ってくれているから」
豪快に笑いながらも嬉しそうなマスターにつられて自分も嬉しくなる。
「じゃぁさっそく頼むよ、僕はケーキの仕込みするから分かんなかったらなんでも聞いて。あ、明日少し動かすからテーブルは適当に並べておいていいからね」
家での手伝いの延長だったから作業はなんなく終了した。
21:15作業終了。
「早いね!テーブルもピカピカだ!ありがとう!」
あぁバイトするって決めて良かった…マスターの嬉しそうな顔を見て素直にそう思う(口には出せないケド)
床にはホコリひとつなく、テーブルの上も整頓され、食器棚には真っ白のティーカップとソーサー、ケーキを載せるお皿が綺麗にしまわれている。
ん?おかしい…
「蛍くんなにかあるかい?」
「えっと…」
「遠慮なくいいなさい、ダメなもんはダメってちゃんと言うから」
片方の口角を上げ威厳たっぷりに笑いながら聞いてくれるマスター。
「あの…この前、押しかけてきたバk…じゃなくてえっと…同級生たちのカップだけ…
「あーーあれね、Aちゃんの私物のカップだよ!」
「しぶつ…」
「そう、彼女がお客さんを見てイメージに合うカップを出すんだそうだ」
「みる…いめーじ…」
「そう、彼女ねカップを集めるのが趣味のひとつなんだって。それでせっかくだからお客さんに出してみたいって事で、あーそういえばこの前も……」
自分だけ真っ白なカップだったとは言い出せず
かといって思考は完全に停止してしまい
マスターが言った言葉を繰り返し言う事で
相槌を打ってると認識してもらうのが精一杯だった…。
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作者名:葉月 | 作成日時:2020年2月19日 20時