８話 ページ9
_
相澤｢お前は確かに頭は良い｣
何が言いたい。これが本題ではないだろう。彼が何を言おうとしているのか、いつもは相手の考えていることには敏感で直ぐに先読みできた。でも今は＿＿分からない。
相澤｢だが、どれだけ強くても所詮は高校生だ。どう足掻いても公安委員会のエースになれるわけがない。なにもんだ、お前｣
彼の言葉を聞いて少子抜けした。なんだ、そんなくだらない質問か。
この人はまだ私の実力を疑いたくてたまらないらしい。ここで戦闘でもして見せつけるのが最適だが、ミイラ男の彼にそれは鬼畜だろう。
私は一度目を瞑ってからゆっくりと目を開けて、得意げに語る。
『どれだけ仕事をしたかなんてこと、世間じゃたいして問題にはされないんです。問題はむしろ、どれだけの仕事をしたと、世間に信じさせられるかどうかなんですから』
相澤｢は？｣
『私は全てを利用してここまで来た。それは私の実力と信頼と、魅せ方です。どうも私は、人に好かれるのが得意なようで』
相澤｢どの口が言うんだか｣
『あなたも数ヵ月後には私の任務解除の時に帰らないでと縋って泣きつくくらい私を好きになってますよ。ああ、想像しただけで吐き気がしてきた』
相澤｢お前よっぽど絞められたいんだな｣
『あはは、冗談です。こう見えても天才型と言うより努力型なんですよ。それが上に認められただけの話です』
そう言うと、彼は少し驚いたように目を見開かせた。私が自分の力を過信しているただのクソガキだとでも思っていたのだろう。失礼なミイラ男だ。
見開かせた目を再度彼は今まで通りの怠そうな目付きに戻し、両手をポケットに入れた。そしてこれまた地に響くような低い声で私に言う。
相澤｢期待をさせるだけさせといて、がっかりさせるなよ？｣
その言葉に私は挑発するように鼻で笑い、こう返した。
『優等生すぎて腰抜かさないようにね、相澤センセ』
では、と私は彼に背を向けて帰路についた。
相澤｢かっこつけて言いやがって。他人の言葉じゃねえか｣
_
【どれだけ仕事をしたかなんてこと、世間じゃたいして問題にはされないのさ。問題はむしろ、どれだけの仕事をしたと、世間に信じさせられるかどうかなんだから】
(緋色の研究/アーサー・コナン・ドイル)
_
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 940人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
坊ちゃん団子 - ひながきさん» もちろんですぅ！糸野かっこいーですね！！ (2023年1月8日 20時) (
レス) @page27 id: f9cc241d98 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - 坊ちゃん団子さん» ありがとうございます！のろま更新ですが待っていただけると嬉しいです！ (2023年1月7日 17時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
坊ちゃん団子 - 大好きです！！応援してます！ (2023年1月6日 8時) (レス) id: f9cc241d98 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - 推しの財布さん» 夢主っぽくない夢主ですが、今後も楽しんでいただけたら嬉しいです！ (2022年11月29日 19時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
ひながき(プロフ) - これはお咲さんさん» うわぁ！ありがとうございます！ (2022年11月29日 19時) (レス) id: 4bea1154e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひながき | 作成日時：2022年11月14日 18時
