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Ep.54 ページ5

*




今日の夜空には満月が昇っていて


いつもより明るい紺色が空に広がっていた




バルコニーの端に小さく縮こまった私は


空を見上げながら静かに涙を流していた






あーあ、言われてしまった




周りの人を不快な思いにさせてしまった




これから私はどうしていけば…






枯れたはずの涙は何処からか溢れ出す









?「そんな所で泣いてたんだ」









突然、私の頭上から降ってきた声




その主から発せられたのは


いつもとは違う、温もりをも感じ取れそうな


優しくて落ち着いた声だった






「クローリー…」




クローリーは私の隣に間を空けて座る






クローリー「何に思いを馳せてたの?」




「…何にも」




すると彼は、ふーん、と

その答えには興味無さげに言った




彼も私と同じく空を見上げる






クローリー「満月だ」




「そうですね」






クローリー「…逃げたい?」




「…そうですね」




クローリー「それはダメだよ」




「はい」






クローリー「チェスに言われたこと気にしてる?」






「…いいえ、気にしてないですよ」




クローリー「嘘だね、泣いてた」






「………月が綺麗で…」






クローリー「月が綺麗ねぇ

いつでもあるものにそういう感情抱くのは
人間の変わった特徴だよね」




「良いものですよ…感情…」




クローリー「いいや、邪魔だね」




「そうですか…」






クローリー「チェスの言ったこと

あれ、自分への腹癒せだから
気にするだけ無駄だよ」






「自分への腹癒せ、ですか」




クローリー「君と仲良くしたかったけど
色々空振って苛々してた


あとは、僕が私用でチェスを放ったらかしたせいだね」




彼は立ち上がり、そう言った




クローリー「まあ、そんなところだよ」




後ろ向きでバルコニー の手摺りに両手を付けながら

空を見上げる




心地好さそうに夜風に揺れる彼の赤髪と三つ編み




こんな穏やかに私に接するのは


きっと気遣いからだろう




吸血鬼には気遣いという言葉は似合わないが




まだこの世界にも


気遣いというものが残っているらしい




クローリー「じゃあ、僕は戻るよ」




「はい…ありがとうございました」






彼は一番星、見つけられたかな




*

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duru04073(プロフ) - このお話面白くて大好きです‼️更新お待ちしております‼️ (2022年5月8日 22時) (レス) @page15 id: d24f182f58 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きが気になります。 更新をお待ちしております。 (2020年7月14日 0時) (レス) id: 06e2b31d82 (このIDを非表示/違反報告)
椰子(プロフ) - Rioさん» 嬉しいお言葉、そしてご愛読ありがとうございます。大変長らくお待たせして申し訳ありませんでした。更新再開をしたいと思いますので、引き続き宜しくお願い致します。 (2020年1月3日 17時) (レス) id: 10448ad118 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - とても面白い作品で大好きです!更新待ってます! (2019年10月16日 16時) (レス) id: aad1bfa27f (このIDを非表示/違反報告)
椰子(プロフ) - ブルーフェザーさん» はじめまして、椰子です。楽しみにして下さっていたのにも関わらず、約一年程何の説明もなしに更新を停止してしまい本当に申し訳ありませんでした。これからお話の更新を再開します。是非とも宜しくお願い致します。 (2019年7月30日 2時) (レス) id: db021fafd9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:椰子 | 作成日時:2018年8月10日 15時

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