初恋とココア【黒羽快斗】

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家を出ると、昼よりも冷たい夜風が体を冷やした。

白く息を吐きながら朱色のマフラーに顔を埋める。



快斗はあのまま寝たけれど、私は先程までずっと寝ていたために全く眠気がない。

することなんてある訳もなく、とりあえず夜空を眺めようと外に出た。


クリスマスのイルミネーションと共に輝く月はすこぶる綺麗だ。



「さむっ」


もちろんコートは着てきたしマフラーだってしている。

けれどやっぱり冬の夜。

寒いものは寒い。


道の横でぽつんと光る自動販売機を見つけると、コートのポケットに入っていた財布を取り出して秒で駆け寄る。


一刻も早く温まりたいからホットの飲み物でも買おう。



お茶が丁度いいのだけど、あったか〜いの文字は無く、つめた〜いしかない。


あったか〜いは、飲めないコーヒーと……ココアだけ。



「………背に腹は変えられない」



ガコン、と音を出して落ちてきたココアは普通なら火傷するくらい熱いが、冷えた指先を温めるには最適だった。



昼間には小さな子供たちが走り回る公園に入り、黄色いベンチに座る。


どこも欠けていないまん丸い月を眺めながら缶ココアの飲み口に唇を押し付ける。


まだ口に入ってもいないのに、ココアの苦さは容易に想像できた。









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