初恋とココア【黒羽快斗】

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ちょっといい感じの喫茶店で、ちょっと洒落た音楽を聞きながら甘いいちごミルクを啜る。



自分でも子供っぽいとは思うけど、苦手なものはしょうがない。

コーヒーなんてもってのほか、甘めのココアでさえも飲むことができないのが私だ。


隣の席で格好よくコーヒーを飲む男性を尊敬の眼差しで見つつ、ピコンと鳴ったスマホを手に取り、彼氏からのLINEに目を通した。



『別れよう』


たった一言、四文字の文面を見つめていちごミルクを一気に口に流し込む。

ごくんと飲み込めば、体中が甘いミルクで満たされたような心地良さを感じた。



「……恋は、やっぱり苦い」


あっちから告白してきたのにな、なんて思ってしまう自分が心底嫌だ。


恋なんて苦いもの、もうしたくもない。



空になったコップを机に置いて席を立つ。


寒い冬の空は青く、ふわふわの雪が辺りを覆い尽くしていた。


まだ十二月に入ったばかりであるというのに街はもうクリスマス一色だ。



「ねぇ、今日の夜怪盗キッドが宝石を盗みに来るらしいよ！」


「マジ！？」


「マジマジ！一緒に見に行こ」



通り過ぎていく女子高生を見ながら、彼女らの話題となっている彼の顔を思い出した。

ついでに、あのクリスマスの日の出来事も。




……久しぶりに、ココアでも飲んでみようか。


飲める訳が無いのに、彼の好きだったココアを飲みたがるのは彼を忘れられない証拠だ。









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