いかないで《Hikaru.I》 (ページ6)

今日:36 hit、昨日:16 hit、合計:123,523 hit

期待ページ6

あの人は相当チョコが好きなんだろう。
毎回幸せそうな顔をしてお店から出て行く。
そんな後ろ姿を見るのがなかなか好きだ。

あの人がお店に来る度私たちの仲は深まっていった。

A「今日はどうなさいます？」

『いつもの！』

A「かしこまりました。」

今日はいつもみたいに壁際に行かずに私がチョコを詰めてるのを見てる。

『ねぇ。』

A「はい？」

『紙とペン持ってない？』

A「ありますよ？」

『ちょっと、貸して。』

ポケットに入ってるメモ帳を1枚ちぎってボールペンと一緒に渡す。

『ありがと。』

サササッと何か書いて私に渡す。

『ん。』

見ると電話番号と一緒に「岩本照」の文字。

A「これって…」

『俺の名前と電話番号。気が向いたら電話してよ。』

少し恥ずかしそうに目を逸らしてそう言う。

A「ありがとうございます。
気が向いたら、しますね。」

少し背伸びをして大人びた事なんか言ってみる。

そう言うと岩本さんは少し寂しそうな顔をしたように見えた。

A「嘘です。今日、時間が空いたら電話かけさせてもらいますね。」

やっぱり恥ずかしくなってそう言う。

すると岩本さんの顔がパッと明るくなった。

チョコを渡すといつもよりも幸せそうな顔をして出口に向かう岩本さん。

『待ってるね。』

店を出る時わたしの耳元でそう言ってにこにこしながら帰って行った。

顔が赤くなっていくのがわかる。

岩本さんからもらった紙を眺める。

期待、してもいいのかな。

自分では気付いていないフリをしていたけど
私は確実に岩本さんに惹かれ始めていた。