猫系彼氏【そらる】

episode13 ページ14

勢いで出てきちゃったけど行くところもなくて。



ただぼーっと歩くだけ。



そのとき。



ふと聞こえてきたのは、綺麗な歌声で。



声のする公園へ行ってみると、そこには私のよく知る人が弾き語りをしていた。



すらっと長い足を組んで、その上にアコギをのせて。



目をつむって歌う姿はほんとうに素敵だ。



私がいるのに彼は気がついていないみたいで。



歌が終わってから私はつい拍手をする。







「あ、ありがとうございます」







ふっと顔を上げた彼は、私を見るなりびっくりした顔をして。



私は笑ってしまう。







A「かしたろさん、すごく素敵でした」


歌詞「Aさん！いや、ありがとうございます」







伊東歌詞太郎さんもそらるさんが紹介してくれた人で。



私はこの人の歌声がほんとうに好きだ。







A「今日はお面してないんですね？」


歌詞「はい、忘れちゃって」







あははと笑いながら首を傾げるかしたろさんは、相変わらずあざとい。







歌詞「あれ？今日はそらるさんは？」







アコギをケースにしまいながら彼は不思議そうに私を見る。



ヤキモチをやいて家を出てきたなんて。



恥ずかしいから言いたくない。







A「今、ろんさんが家に来てて」


歌詞「…え」


A「ふたりでゲームしてるんです」


歌詞「えと、ろんさんが…？」







私が頷くと彼は曖昧な表情をして。



どうしたんだろう。



かしたろさんはいつも笑っているイメージがあるから、なんだか違和感がある。







歌詞「これって、言っていいのかわかんないんですけど」







そこで一旦言葉を置いたかしたろさん。



なんで嫌な予感しかしないんだろう。









＊









歌詞「ろんさんとそらるさん。


昔、付き合ってたんです」

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