3．好きだよ ページ4
ツ…っと彼の指先が私の掌をなぞった。縋るような手つきで。
彷徨っていた手が優しく、だけど強く絡められる。
流れるような動作に振り解く隙もなく。
目の前に立っている染谷くんは、悲愴な面持ちになっている。
私は気づいた。彼はすごく悲しんでいるということに。
悲しんでいるからこそ、嘘をついた私を責めているということを。
彼の怒りを受け止めるしかない。受け止めて、何か変わる訳ではないけれど。
私は腹を括って口を開いた。
「ごめんなさい…私が何も、分かってなかったから……染谷くんは何も悪くな＿」
「そんな言葉が聞きたいんじゃない！」
「っ…！」
「成海には…………Aには、僕のそばにいて欲しいの。…僕から、離れて行かないでよ……」
最後の声は、消えてしまいそうだった。切実な響きと真剣な瞳に、嫌でも顔が熱くなったのが分かる。
ひと気のない廊下だったからこそ、その言葉はとてもはっきりと耳に入ってきた。
じわりと涙腺が緩んだのはきっと、久しぶりに名前で呼ばれたから…それは違うか。
「ねえ、A…………好きだよ」
「へっ」
「嫌なら振り払って」
そう言った染谷くんが、繋がれた手に力を込めてきた。
(「振り払って」って…染谷くんの力が強すぎて、っ…)
そしてだんだんと彼の顔が近づいてきて、反射的にぎゅっと目を瞑る。
(…ん？)
予想していた場所…ではなく、頬に柔らかいものが触れた。
目を開けた私は＿
「そ、そっち…？」
「え？」
「あ、違っ、今のは！」
私はなんて馬鹿なんだろう。
お互いの頬が離れたのに、まだ顔が熱い。
チークキスをされた私は、思っていたことが口から漏れてしまい、慌てて否定しようとする。
だけど、その反応で察したのか、染谷くんの口角が意味ありげに上がった。…あっ、終わったかも。
「A、何を期待してたの？」
「な、にも…？」
「僕さぁ、ちゃんと言ってくれないと分からないんだよね」
「え！！？？」
(キスされると思いました、って言うの？いや、駄目でしょ)
彼の口ぶりを聞くに、ぜっっっっっったいに私が予想していたことを分かっている。
どう回避しようか考えていると、「勇次郎、ここにいたのかよ」と金髪を1つで結んだ男子がこちらに向かってきていた。
確か彼は、染谷くんと同じユニットの柴崎愛蔵くんだ。
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ほたる(プロフ) - 奈津さん» ありがとうございます！出来上がり次第、更新します！ (9月20日 6時) (
レス) id: 858ad6cafb (このIDを非表示/違反報告)
奈津(プロフ) - めちゃくちゃ好きです、更新楽しみに待ってます！！ (9月19日 22時) (レス) @page4 id: 1b362c8584 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほたる | 作成日時：2023年8月22日 17時
