13．出会い ページ19
染谷くんとの出会いは中学３年生の春。その時は、要領が良いねえ達との差を特に気にしていた時期だった。
『あっ……ピアノの音…』
日直の仕事を終え、帰ろうとした私の耳に明瞭なメロディーが届いた。ドビュッシー作曲、ベルガマスク組曲第三曲の「月の光」。穏やかな月夜を連想させる切ない一曲である。
(どこから流れてるんだろう…)
気づいたら駆け足になって音の行方を探していた。
だって、音符をなぞるだけのはずが、１人で月を見ているかのような。そんな姿がぼんやりと頭の中に浮かんできたのだ。
何か才能の差を痛感していて、波風をできるだけ立てないけど、必死に歯を食いしばってもがいている人影が＿
辿り着いた所はひと気のない音楽室だった。
そろりとドアから様子を覗き見して「えっ」と小さく声を上げてしまう。
藍色の艶のある髪が肩までかかっており、極端に伸びた前髪。クラスで目立っていないけど、見覚えのある顔立ち。
(同じクラスの染谷勇次郎くんだ…！というか、ピアノ弾けるんだ！？)
それに、教室にいる彼とは少し違う。警戒心がなく雰囲気が柔らかくて…思わず私は見惚れてしまっていた。
＿ガタッ。
…手がドアに当たってしまい、意外と大きな音が出てしまうまで。
『………………………誰かいるの？』
演奏が止まり、ドア越しに戸惑った声が聞こえる。
(や、やってしまった……仕方ない！ここはもう正直に…)
ドアをスライドして中に入る。
『ご、ごめんなさいっ！』
『あ…君って、』
『決してわざとではなくてですね……！？あの、貴方の演奏がすごく上手で、こんなに綺麗な音を出す人ってどんな人だろうって………ごめんなさい、見逃して下さい！！』
自分でも何を言っているのか分からない。日本語はめちゃくちゃになってしまったし。
『……ふっ』
『えっ？』
てっきり勝手に覗いた事を怒られると思っていたのに…
彼は、我慢できないと言って笑い出した。
笑っちゃいけないとでも思っているのか笑い声のボリュームは控えめで。
…なんかそっちの方が気を遣わせてて恥ずかしいのだけれど。
少年はひとしきり笑うと、「見逃して下さいって犯人が言う台詞だよね」と話しかけてくる。
目は合わなかったけど染谷くんと話したのはこれが初めてだった。
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ほたる(プロフ) - 奈津さん» ありがとうございます！出来上がり次第、更新します！ (9月20日 6時) (
レス) id: 858ad6cafb (このIDを非表示/違反報告)
奈津(プロフ) - めちゃくちゃ好きです、更新楽しみに待ってます！！ (9月19日 22時) (レス) @page4 id: 1b362c8584 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ほたる | 作成日時：2023年8月22日 17時
