12．嘘 ページ14
「大丈夫！？」
元カレに別れた理由を聞かれる。気まずくて会いたくないのに会う。運命というものは甘くなく、時に残酷だ。
「だ、大丈夫…ありがとう染谷くん」
「……うん」
彼に押し倒されている。その事実を頭の中で理解してみると、勝手に顔に熱が集まってくる。
神様を恨むと同時に、これだけドキドキしていることはまだ彼を好きなんだと証明していて。
その時、ドタドタドタ…と足音が聞こえた。反応する暇もなくドアが勢いよく開かれ、
「勇次郎〜？お前何してんの？」
「勇次郎くん怪我とかしてない！？」
見知った２人が入ってきた。
「柴崎くん……と聖奈ねえ！？」
何でここに…と言いかけて、『ロメオ』に出演している事を思い出す。
(あぁ…そんなこと考えてる時間なんてないのに)
慌てて立ち上がる。染谷くんと少し距離を取る。
「A…勇次郎くんと何してたらそんな事になるの？」
何でもない風に尋ねてきた聖奈ねえ。だけれどその瞳にははっきりと好奇心があることが窺える。
中学生の時に染谷くん斗付き合っていたことは、聖奈ねえ達には言っていない。いじられるのが目に見えているし話す機会がなかったのだ。
…大丈夫。今、話の主導権は私が握っている。
「えっと、マネージャーさんに頼まれて！あっ染谷くんとは同じ中学のクラスメイトで……。染谷くん振り付け忘れたって言ってたからさ！？聖奈ねえも関わってるし、応援している１人のファンとして協力したいなーって！！」
「勇次郎、お前振り付け完璧って言っ＿痛いわ！殴るなよ！」
「ごめん。手が滑って」
「えー？染谷くんが柴崎くんにそんなことを……嘘は駄目だよねー！！」
嘘だったんかい。けろりとした顔でよく「覚えてない。僕は体を動かしながら思い出すタイプなんだよね」なんて言えたものだ。
焦っている。染谷くんは絶対焦っている。
ここぞとばかりに、(言い方は悪いが)彼の失言をネタにして話を脱線させていく。どうだ、私にだって彼を追い詰めることが出来るんだぞ、と誇らしくなる。誰も見ていなければ、海老反り並みに(物理的に)胸を張るのに。(ダサい)
「……………それならさぁ、Aも嘘はよくないんじゃない？」
「…え？」
彼の顔を見ると綺麗な笑みが。私は知っている。わざとらしい笑顔の時程、とんでもない毒を吐くのを。
「高校に入るまで僕たちが付き合ってたこと、言っといた方が良いと思うんだけど」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 33人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほたる(プロフ) - 奈津さん» ありがとうございます！出来上がり次第、更新します！ (9月20日 6時) (
レス) id: 858ad6cafb (このIDを非表示/違反報告)
奈津(プロフ) - めちゃくちゃ好きです、更新楽しみに待ってます！！ (9月19日 22時) (レス) @page4 id: 1b362c8584 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほたる | 作成日時：2023年8月22日 17時
