アンジュ・エ・デモン 2nd

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冠婚葬祭の時しかハイヒールは履かないから、いつもみたいに歩けない。



それをわざわざ言わなくても歩調を合わせてゆっくりにしてくれる流星くんはなかなか手慣れてるとは思う。








「そういう格好、初めて見た。わりとボーイッシュだよね？普段」



「あー…うん、そうかも。ヒラヒラした洋服苦手なんだ。見慣れないし、笑えるでしょ」







普段パンツスタイルが多いから、自分でもワンピースを着てるのに違和感。

照れ隠しでわざとスカートの裾をピラピラ揺らすと、その手をギュっと握られた。








「こら。そーいうの、外でしない」



「…すいません」



「可愛いよ、新鮮で。やっぱ迎えに来て良かった」



「わざわざ来てくれなくても大丈夫だったのに…ほら、会場も駅近だったし」



「…そーじゃなくてさぁ…。



ほんと、鈍いよねAちゃん。早く回収したかったから来たに決まってるのに」



「回収って…可燃の日みたいに言わないでよ」



「あはは、確かに。


じゃあ、素直に言うわ。二次会って新しい出会いの宝庫だから。心配だから迎えにきた、それが本音」








やば。今ありえないくらいキュンとした。







思わず立ち止まると、流星くんも止まって首を傾げる。








「どうした？足痛い？」



「…ううん、違う。



流星くん…迎えに来てくれてありがとう…」



「…どういたしまして。帰ろ？」








差し出された左手に、そっと右手を伸ばすとそのまま引き寄せてくれて手を繋いだ。






そのまま家の最寄り駅に着いて、別れ道になる。








「じゃあ、あの…おやすみ…なさい」







繋いだ手を離そうとしたけど、流星くんはそのままギュっと強く握ってくる。








「あの…？」



「うち、来ない？」








それが何を意味してるかくらい分かってる。







恋愛には勢いも必要。

もちろんいい加減なのは良くないけど。







…どうしよう。






この一瞬で、私が悩み抜いて出した結論は…







「あのさ」



「ん？」



「うち、来る？」



「えっ。Aちゃんの家？いいの？」



「うん。そんな綺麗じゃないけど」



「やった。行きたい」








可愛らしい笑顔に安心する。



この日、初めて流星くんが私の部屋に来た。

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