アンジュ・エ・デモン

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あの夜から、重岡くんとは一度も話してない。





絶対避けてるもん、重岡くん。私のこと。





そりゃ、最低な嘘つかれてこき使われてムカついて、あの時は普通の友達になんて無理って言ったけどさ








もう一回ちゃんと謝ってくれれば、私だって大人だから仲直りしようって思ってるのに。







「やば。時間無い…」






時計を見ると、思った以上に時間が経っていた。





今日は何を隠そう、流星くんとデートの日。

今回はなんと、飲みじゃなくて映画行こうって言ってくれた。







百合が、昼デートを提案してくれる男は遊びじゃ無いって言ってくれたし♡






色んなモヤモヤをかき消すように一回首を振って、早く準備して行かなくちゃ！






家を出てエレベーターに乗ると、5階で止まった。





そこへ入ってきたのは、まさかの重岡くん。







「あ…」



「うわぁっ……なんや、びっくりするやん」



「…私のが先に乗ってたし」



「そっか。せやな…」







気まずい時間が流れる。



一階へ行くまでほんの一瞬なのに、とてつもない時間。







「雰囲気ちゃうな、今日」



「え？」



「デート？藤井さんと」



「あぁ…うん、まぁ。映画行くんだ、今から」



「…そっか。可愛いいやん、絶対うまくいくで」








なんでだろう。



胸が苦しいくらい、ギュってする。







エレベーターが一階に着いて、お互いの行き先が駅までだから一緒に行く事になった。






「重岡くんはどこに行くの？」



「俺は、神ちゃん家。余興の練習で、最近通ってんねん」



「へぇ。あ、でもピアノは？」



「神ちゃん家にあるから。あの人マニアやから楽器の種類凄いわ」



「へー…そうなんだね。順調？練習」



「まぁ、ぼちぼち。でも緊張するで、まだ会社の人に知らん人ばっかやし」



「そうだね…でも、大丈夫だよ。あんなに綺麗に弾けるんだもん、ピアノ」



「おん、ありがと」







久しぶりに話して、目が合って、笑えた。

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