アンジュ・エ・デモン

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藤井さんは背が高くて、凄く綺麗。

笑顔も可愛い。
1年前からこのカフェで働いているって事以上の情報は分からない。




だから年齢も、このお店の社員なのかバイトなのかすらも分からなくて。




当然同じように、彼目当てで通ってる女の子はたくさんいるから、お昼休みは長蛇の列。

順番が回ってくる頃には業務時間ギリギリで、いつも注文とお会計のやりとりしか出来ない。






「ホストに通う気持ち分かる…」


「え」


「ナンバーワンホストだよ、藤井さん」


「ホストって。安い店だな、一回ワンコイン以下じゃん」






今朝あった超イレギュラーな出来事を除けば、私の日常は平々凡々。

凡の凡の凡。






そう、今朝の事以外…







「岡野、課長呼んでたで」






藤井さんに見惚れてた幸せな空間に入り込んできた声。





何気なくその方向へ顔を向けると、息が止まりそうになった。







「えー、なんで？」


「知らんわ」


「怒ってたの？」


「さぁ。でも、急ぎっぽかったで」


「えーーーー、休憩中なのにー！

ごめん、私戻るね。課長めんどくさいから」


「あ、ちょっと…！！」







めんどくさい系の、百合の部署の課長。

拗らせたくないからか百合は列を抜けて仕事に戻ってしまった。







そして百合を呼びに来たのは、同じ部署の…重岡くん。






百合がエレベーターに乗り込んだのを見届けてから、ニコっと笑った。







「朝、間に合ったんやな」


「おかげさまで…」


「誰にも見られんかった？」


「うん、大丈夫だった。
あのさ、今朝…というか、昨日の事なんだけど…」


「おん、何やった？」


「何やっていうか…ねぇ、なんで教えてくれないの？

知る権利あると思うんだけど！」






下手に出てもラチがあかない。

ちょっと強気で聞いてみた。







そしたら、態度を変えた私に驚いたのか重岡くんから笑顔が消えた。

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