マシェリ〈Ma cherie〉〜force〜

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電話の相手はお母さん。


更衣室では電話に出られないから、入り口付近の着替えに影響のない所まで移動してから電話に出た。




「もしもし、どうしたの？」



『どうしたのって、お誕生日だから電話したんだけど。
28才おめでとう。早いわね、年取るのは』



「本当だよ。ありがとう、わざわざ電話くれて。
お母さんたちは、みんな元気？」



『うん、おかげさまで。時間出来たらたまには帰ってきてよね。
なんなら、彼氏連れてきてもいいんだけど？』



「ふふ、そうだね。タイミング合えば」



『えっ。いるの？彼氏！』





私だって、お年頃。そりゃあ親としては、娘の未来も心配してるよね。

だからサラっと恋人の存在を明かしたら、想像以上にお母さんは食いついてきた。





それをなんとか宥めて、フと気になっていた事を聞いてみた。

私には10才年下の弟がいるんだけど…





「お母さん、流星元気？」



『え？うん、元気だけど…どうしたの、珍しいわね。流星の心配なんて』



「うん…そういえば、あの子今年大学受験だったなーって思って。ちゃんと勉強してるの？部活ばっかりなんじゃない？」



『さすがに夏休み前に引退して、やっと現実的に考えたみたいで塾の夏期講習行ってるわよ。


なんかね、関西学園大学？とかいうところに行きたいらしいんだけど、レベルが全然見合ってなくて。何とか言ってやってよ。

お母さんもお父さんも煩がられちゃって聞いてくれないんだから」





あれ？そこってもしかして、淳太くんと同じ大学じゃん。

奇遇だなぁ。でも、あそこに行くとなると…






「流星、万が一そこに受かったら一人暮らし？」



『そりゃそうよ。山梨からどうやって通うの？

推薦とかも考えてるみたいだけど、どうなることやら…』




「寂しいんじゃない？流星が一人暮らしなんかしちゃったら」




『そうねぇ。流星、お母さんの彼氏みたいだったからなぁ』






そうそう。やっぱ、娘と息子は違うんだよね。
娘は大人になるにつれて対等というか、友達みたいになってくる。




だけど、息子は幾つになっても可愛いままで。ちっちゃい彼氏、って表現が似合ってる。






『そこで彼女でも作ってきたら、お母さん嫉妬して流星の部屋に住み着いちゃうかも』






あははってカラッと笑ってるお母さんの言葉を聞いて、何だか心の中で色んな事が片付いた。





嫉妬なんだって。

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