23話 ページ24
『ハギ…。ハギのおかげで、みんな助かったよ…。ありがとう…。』
あの、プラーミャの事件から数日が経ったある日。
米花中央病院の一室。萩原研二の名前が掲げられたその病室にAはいた。
この度の事件の、キーとなった彼の手をギュッと握り締めると、涙声でそう言った。
あの頃と同じ、温もりを伝えてくるその手は未だ握り返すことはない。
彼は7年前の爆弾事件から今に至るまで、ずっとこの病室で眠っているのだ。
いつ目覚めるのかは医者にもわからないという。
“今日なのか、来月なのか、数十年後なのか。それとも、もう目覚めることはないのか。”一番最初にそう言われてもう7年が経とうとしている。
_____あの事件。交番勤務だったAも交通整理や避難誘導のために現場にいた。
Aと松田の目の前であの爆発は起こったのだ。
その当時のことを思い出すと、胸が痛む。それと同時に、彼の変わらない顔を見るとひどく安心するのだ。
Aが物思いにふけていると、扉がガラガラと音を立て開いた。
松「A…もう来てたのか。」
『…うん、今回のMVPに会いにね。』
松「あぁ、奴の計画を阻止できたのは2回ともハギのアイデアのおかげだからな。」
『そんなMVPさんはずっと夢の中なんだけどね…』
松「…早く目覚めろってんだよな。」
松田はAが触れていない方の手と拳を合わせた。
「…じ、んぺー、ちゃ…、A…ちゃん…?」
かすかに、掠れた男の声が聞こえた。
『…っ、ハギ…!』
Aが握っていたその手は弱々しくも握り返している。薄く開かれたその目に、2人の顔が映る。
どちらも、信じられないという顔で固まっている。
松「萩原っ、お前…」
萩「…なんつー顔…してん…だよ…。色男が…台無し…だぜ。じんぺー…ちゃん。」
松「馬鹿野郎…そんな顔させてんのはてめーだよ…」
夢かと思った。これは都合のいい夢なのだと。目を覚ませばまた、眠り続ける彼を見ることになるのかと。
Aは空いている手で頬をつねった。痛みが走る。これは夢じゃないんだ。痛みの残る頬に何かが流れる感触。涙が止まらない。
『痛い…』
松「今ゼロ達も呼んでくるから、そのまま起きてろよ、ハギ。」
松田はポケットから携帯を取り出すと病室を飛び出していった。
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星空ブリキ - わーしすこんd(これ以上言うと降谷さんに怒られるので言わないどきます) (2022年7月3日 12時) (レス) @page27 id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
しゅる - S丸さん» おけだす! (2022年6月19日 19時) (レス) id: 29acc038ba (このIDを非表示/違反報告)
S丸(プロフ) - みみこさん» ありがとうございます〜!! (2022年6月19日 18時) (レス) id: a42ffbde28 (このIDを非表示/違反報告)
S丸(プロフ) - しゅるさん» こちらこそありがとうございました〜〜!!こんな感じでよろしかったですかね…?? (2022年6月19日 18時) (レス) id: a42ffbde28 (このIDを非表示/違反報告)
みみこ(プロフ) - こういうの大好きです!!シスコン降谷さん最高! (2022年6月19日 17時) (レス) @page27 id: 2d0bd82d4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:S丸 | 作成日時:2022年5月22日 18時