検索窓
今日:6 hit、昨日:56 hit、合計:255,410 hit

23話 ページ24

『ハギ…。ハギのおかげで、みんな助かったよ…。ありがとう…。』





あの、プラーミャの事件から数日が経ったある日。



米花中央病院の一室。萩原研二の名前が掲げられたその病室にAはいた。





この度の事件の、キーとなった彼の手をギュッと握り締めると、涙声でそう言った。



あの頃と同じ、温もりを伝えてくるその手は未だ握り返すことはない。


彼は7年前の爆弾事件から今に至るまで、ずっとこの病室で眠っているのだ。




いつ目覚めるのかは医者にもわからないという。

“今日なのか、来月なのか、数十年後なのか。それとも、もう目覚めることはないのか。”一番最初にそう言われてもう7年が経とうとしている。











_____あの事件。交番勤務だったAも交通整理や避難誘導のために現場にいた。



Aと松田の目の前であの爆発は起こったのだ。


その当時のことを思い出すと、胸が痛む。それと同時に、彼の変わらない顔を見るとひどく安心するのだ。



Aが物思いにふけていると、扉がガラガラと音を立て開いた。



松「A…もう来てたのか。」


『…うん、今回のMVPに会いにね。』


松「あぁ、奴の計画を阻止できたのは2回ともハギのアイデアのおかげだからな。」



『そんなMVPさんはずっと夢の中なんだけどね…』




松「…早く目覚めろってんだよな。」



松田はAが触れていない方の手と拳を合わせた。










 
 














「…じ、んぺー、ちゃ…、A…ちゃん…?」



かすかに、掠れた男の声が聞こえた。


『…っ、ハギ…!』



Aが握っていたその手は弱々しくも握り返している。薄く開かれたその目に、2人の顔が映る。

どちらも、信じられないという顔で固まっている。



松「萩原っ、お前…」



萩「…なんつー顔…してん…だよ…。色男が…台無し…だぜ。じんぺー…ちゃん。」



松「馬鹿野郎…そんな顔させてんのはてめーだよ…」




夢かと思った。これは都合のいい夢なのだと。目を覚ませばまた、眠り続ける彼を見ることになるのかと。



Aは空いている手で頬をつねった。痛みが走る。これは夢じゃないんだ。痛みの残る頬に何かが流れる感触。涙が止まらない。



『痛い…』







松「今ゼロ達も呼んでくるから、そのまま起きてろよ、ハギ。」




松田はポケットから携帯を取り出すと病室を飛び出していった。

24話・end→←22話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (349 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1357人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

星空ブリキ - わーしすこんd(これ以上言うと降谷さんに怒られるので言わないどきます) (2022年7月3日 12時) (レス) @page27 id: d39a98933d (このIDを非表示/違反報告)
しゅる - S丸さん» おけだす! (2022年6月19日 19時) (レス) id: 29acc038ba (このIDを非表示/違反報告)
S丸(プロフ) - みみこさん» ありがとうございます〜!! (2022年6月19日 18時) (レス) id: a42ffbde28 (このIDを非表示/違反報告)
S丸(プロフ) - しゅるさん» こちらこそありがとうございました〜〜!!こんな感じでよろしかったですかね…?? (2022年6月19日 18時) (レス) id: a42ffbde28 (このIDを非表示/違反報告)
みみこ(プロフ) - こういうの大好きです!!シスコン降谷さん最高! (2022年6月19日 17時) (レス) @page27 id: 2d0bd82d4d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:S丸 | 作成日時:2022年5月22日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。