The Lizard man (ページ5)

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寒い、雪が降る夜だった。

二歳になった子供を抱き、鉄道の駅までかける。

誰にも見られてはいけない。

人目を気にして、息子を隠すように毛布にくるみ、走る。

駅につけば女は駅舎の椅子の上に、息子とあらかじめ用意しておいた封筒を置いてすぐにまた走り出した。

清々する。心地よい。心が晴れる。

もう何も後ろめたいことなんてない。

これで私はあの忌々しい息子を忘れ、疎遠になっていた実家に帰ることができる。

あいにく父と母は息子のことを何一つ知らない。

鉄道事故で死んだ夫。いもしなかった息子。

これでいい。私の人生は守られた。また上流貴族に仲間入りだ。

＊

それからしばらく男の子は、雪が降るのをじっと見ていた。

寒さはない。とうの昔に捨ててしまったかのように。

駅員が出勤してきて、男の子を見つけたのは、幾分かたった頃だった。

雪に紛れる程の白い肌と、その肌を覆う鱗。

薄いヘーゼルの瞳を見た駅員は一度たじろいだが、出来たばかりの鉄道に"奇形児の死体発見"などという記事が出されては困る。

渋々、冷え切った体を抱き上げ、室内へと運んだ。

このような奇形児。母親が自ら名乗り出るはずもない。

捨て子だろう。可哀想に。けれどお前が悪いんだ。

孤児院は奇形児を受け付けない。

ドイツでは余計に差別は進んでいる。

アメリカなんかの欧米に行けば話は別だが、こんな子供相手に船賃を出してやるものか。

ユダヤ人や黒人を扱う商人がいるはずだ。

いくらフリークでも子供なら生活費の足しにもなるかもしれない。

連絡を取れば、すぐに背広姿の紳士がやってきて、子供を一瞥した後、銀貨の入った革袋を置いて子供と出て行った。