The Lizard man (ページ1)

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客席よりページ1

サーカステントに集まる大勢の客に対し、Mr.バーナムは口上を述べる。

「続いて、世にも奇妙なトカゲ男、lizard manによる命がけの綱渡りです！」

スポットライトがゆっくりと動き、男が立つ天井すれすれの台を照らすと、男の肌が生々しくテラテラと光った。

白人種であり、アメリカよりも西洋風の顔立ちは美しく整っているが、彼の薄いヘーゼルの瞳は見事に外側を向いている。

なるほど、だからlizard manか。

また肌をよく見ると、光っていたのは爬虫類の鱗であった。

男は器用に足先でロープを捕らえ、スイスイと進んでいき、時たま片脚立ちをしたり、四足歩行したりと、コミカルにポーズを決める。

その後、ロープを渡りきった男は台からこれまたロープを使って降り、客席に一礼してから舞台裏へはけると、またMr.バーナムが口上を始めた。

フィナーレのダンスに彼は参加せず、空中ブランコ乗りの兄弟と共に天井に吊るされた輪に絡み、観客に手を振りながら歌を歌っている。

彼の外斜視の瞳と目があった時、私はつま先から頭の先まで鳥肌に包まれた。

今まで噂でしか聞いたことのなかった、P.T.バーナムのサーカス。

"客が笑顔で出てくる舞台"と上流貴族に広まったのはここ最近の話である。

先ほどの歌にもあった通り、グレイテスト・ショーであることは間違いなさそうだが、役者たちの時折見せる悲しそうな笑みには居心地の悪さを感じた。

私自身、上流貴族の家で、愛し愛され育った箱入り娘。

フリークスは最下層だと教えられてきた。

興奮気味の友人をちらりと一瞥し、私はもう二度とサーカスは見たくないと誓った。

その日の夜、フカフカとした高級そうなベッドに入り、ナイトテーブルのランプを消すと、なぜかlizard manの顔が浮かんできた。

目があった時。

外斜視の瞳を細め、眉を屈折させた、少年のような笑み。

私はあの笑顔を忘れることはないだろう。