3話 ページ4
sideA
居酒屋の前に着いたら、田口さんが扉をガラリと開ける。
横にガラガラと開く式でなんだか古い印象を受けた。
田口さんと狩田に続いて、皆ゾロゾロと店に入って行く。
口々に今日の仕事はどうだったなどとお喋りをして、楽しそうだ。
私は…というと、ざわめく行列の1番後ろで肩身の狭い思いをしながら、ソロソロと着いて行った。
中は明るい照明に清潔なフロアでとてもお洒落な店だった。
流石、田口さん。。。
え、なんでこの人来るの？？みたいな目線を若い子たちからビシバシ受けていた私は少し心が安らいだ。
ちなみに私より年上の白山課長は田口さんに似たような格好をしている女子達に囲まれていた。
…私だけ取り残された感じ…。
困った様子も楽しそうな様子も毛ほども見せず、輪の中心にちゃっかり居座っている。
悔しいが、そういう人だ。
白山課長は狩田に負けず劣らずの容姿をしていながら、浮いた話は一つもない。
それに比べて狩田はというと、私の耳にさえ入ってくる風の噂さえ凄惨なものだ。
○○課の✖✖さんと△△課の□□さんとで、取り合いがあったとか、
✖✖課の△△さんと□□課の◯◯さんが喧嘩したとか…。
とどのつまり、狩田は恋愛にルーズで、普通に浮気をするクソ野郎だ。
本人曰く、『彼女たちは友達だよ？』らしい。
それを聞いたときには、こめかみがヒクリと動くのをどうしても止められなかった。
ちなみに、白山課長に浮いた話がないことにも、ちゃんと理由がある。
白山課長はとにかく厳しい。
仕事が出来ない人はもちろん、仕事が出来てもルーズな人にも容赦はしない。
もちろん私も例外ではない。
最初のほうは納得のいく注意やお叱りだったのに、今では理不尽なほどに怒られる。
この前なんか、取引き先との商談が少し長引いてしまい、20秒遅れてしまったとき…
「いいかげんにしてください。あなたは本当にトロイ。あなたのおかげで、私まで面倒を被ります……以下略」
え…あなた急いでたんじゃ無いのですか？と言いた
くなる程、くどくどくどくどと説教される。
さらに面倒なことに、他の人なら10分で終わる説教が、私には30分かけるのだ。
30分だ。考えてもみてほしい。30分あれば次の商談は終わっているではないか？
若い女性社員と話しているくせにニコリともしない白山課長を見て、だからこの人は彼女が居ないのだと下世話なことを考えた。
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作者名：clown | 作成日時：2017年4月19日 20時
