2話 ページ3
sideA
私は狩田になめられている。
もちろん、物理的ではない。
一応、先輩と私を呼ぶが、あとは全部タメ語だ。
さらに、いちいち嫌味を言って来る。
巧妙な嫌味をここぞとばかりに挟んでくる。
ちなみに狩田はこの課で一番若い。大学を卒業して間もないリアル新人だ。
そして、彼は社長の実の息子だ。
悔しいことに、ルックスも大学も一流である。
自己紹介のとき、かれがニコリと営業スマイルする度、周りの女性社員から黄色い歓声が上がっていたのをはっきりと覚えている。
皆、そいつを一目見ようとワラワラと他の課から人がくるしまつだ。(主に女性社員…。)
狩田の親父さんは狩田を次の社長にしようと考えているらしくて、狩田の指導係を誰がやるのか決めるためだけに会議までもが開かれた。
そして、選ばれた栄光ある指導者は、
なんと 私。
普通、こういうのは仕事の出来る人こそ選ばれるものだ。
恥ずかしいことながら、私もそう考えていたので、
「あ、やっと私の才能に気付いたか重役達は。」
と信じて疑わなかった。
むしろ、それに猛反対したという白山課長に半怒りを覚えたほどだ。
しかし、私がそれに選ばれた理由は、私が考えていた理由とはかけ離れたものだった。
『仕事出来ない奴をまず見せて、その後、白山くん辺りに頼もうかな。どうせ、暇でしょ、あの子。』
という社長の言葉があったからだという。
悪い例をまず狩田に知ってもらおうと言うことらしい。
なんと言うことだ。…悪い例…。。。
これを説明していた白山課長の話に挟みこまれた、ため息は実に32回。
…いや、多すぎだろ。
というのも、私は仕事の効率がそれほど悪いわけではない。
ただ、周りが桁違いに仕事が出来るだけだ。
なら、なぜこの会社に入れたといわれると私にも分からない、、、
とにかく、そんなことがあって私は狩田の指導係になった。
初めの内は良かった。
「先輩、よろしくお願いします!!」
いかにも元気があって、可愛い後輩。
あ、なかなかいいかもしれない。。なんて
先輩という響きに多くの新人に慕われる夢を見た私はそんなことを思った。
それが、、、今や、
「先輩は、とにかく鈍臭いんだよ。」
狩田がニヤリと顔を歪めながら私に耳打ちする顔が目に浮かぶ。
あの可愛かった面影はどこへやら。
酒屋へ行く途中の道で田口さんや他の女性社員と談笑する爽やか狩田を見て一つため息をついた。
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作者名:clown | 作成日時:2017年4月19日 20時