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1話 ページ2

sideA

「皆さん皆さん!!飲みに行きましょう!!」

フロアに響く高い声にパソコンを打ち込む手を休め、その声の方に目をやる。

ほとんど金髪と言っても良いほど明るい茶髪の女性社員がジョキを手に持つ仕草を周りにして見せた。

田中さんといっただろうか。まだこの会社に来て2年程の若い会社員だ。

少し巻いたセミロングの髪に可愛らしく、濃すぎない化粧をして、いかにも女の子という感じの子だ。

整った顔で満面の笑みを浮かべる彼女を見て、思わず周りの社員も顔がほころんでゆく。

もちろん、私も例外ではない。

彼らに賛同の声をかけられた彼女は、ふわりともう一度笑って、急に私の方に顔を向けた。

「神宮さんはどうされますか??」

少し頭を右に傾けながらあどけない表情で私に聞く彼女。

大きな瞳に見つめられて、私は返答に困った。

私の会社の飲み会、特に若い女性社員が幹事の場合は若い社員しか行かないという暗黙の了解がある。

いわゆるコンパ状態になるのだ。

ちなみに私は来年、三十路を迎える。

若い…?

微妙だ。

もちろん賛同して席を立った子達はみんな私より年下。

なぜ彼女が私を誘ったのか不明だったが取りあえず断ろうと思って口を開きかけたとき、

「先輩、行くの?」

先輩と付けておきながらタメ口調、軽い調子で私の席の横に奴が立った。

「じゃ、俺も行く。飲み比べな先輩。」

私の返答も待たずに勝手に勝負を申し込んでくるそいつは、怖いくらい整った顔をニヤリと歪めた。

こいつ…また。

タメ語でも調子が軽くてもこいつは許される。

この会社の社長の子供だからだ。

「狩田くんも行くの?マミ嬉しい!!」

狩田と私の会話(私は一言もまだ話していないが)を聞いて、田中さんが心底嬉しそうに笑う。

あ、田中さんってマミって名前なんだ。

1人納得していると、狩田がまた私の方を向いた。

「先輩、来るよね?」

え…行くつもり無いんだけど…。

また口を開きかけたときに、今度はガタッと椅子を立つ音に遮られた。

皆一斉に音の方に目をやる。

その目線の先では白山課長が手を真っ直ぐに掲げて立っていた。

「私も行きます。」

え…

目が点になる。

しばらくして田中さんが口を開いた。

「まぁ、多い方が楽しいですからね〜」

偉いなこの子。

狩田にナチュラルに手を巻きつける田中さんの名前プレートを見て、私は焦った。

あ…田口だったこの子。

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設定タグ:オリジナル , 夢小説 , 会社員   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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作者名:clown | 作成日時:2017年4月19日 20時

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