上司は○○シリーズ【降谷零】

上司は赤色が嫌い1 ページ10

「はぁー。」

誰もいない更衣室に響く溜息は勿論私のものだ。
今日は3ヶ月に1度の柔道の合同練習の日。
警察官たるもの素手で犯人を捕まえることも多いので武道を常に磨いてないといけない。

「はぁー。」

ただ今日は気分が乗らない。
それは合同練習や柔道が嫌だというわけでない。
あのパワハラ上司が参加するからだ。
自分にも他人にも厳しい彼が参加した日には地獄を見る。
気のせいかもしれないが私には特に厳しい。
多分女だからといって舐められないように、という意味で鍛えてくれてるんだと思う。

ちらっと時計を見れば集合時間まで10分を切った。
これで最後と思いっきりため息をついてゆっくりと帯を締めた。


「次！」

道場に木霊するのは身体が畳にぶつかる音と、降谷さんの声。
相変わらず容赦ない。

「お前は入り込む時隙ができる。もう少し姿勢を低くしろ。」
「・・・はい！」

的確なアドバイスをくれるのはさすが降谷さんといったところだ。
今は潜入調査で中々合同練習に出れないがこういうところがしっかりしているので実は受けが良かったりするのだ。
――私は勘弁して欲しいのだが。

「他の者は休憩。よし、A!」
「・・・はい。」

あー呼ばれてしまった。
ゆっくりと歩いていたら即背負い投げを食らってしまうからキビキビと降谷さんの前に移動する。

「よろしくお願いします。」
「仕掛けてみろ。」

降谷さんの声に一歩前にでる。
前回は払腰を仕掛けて返り討ちにあった。
同じ失態は許されない。

上司は赤色が嫌い2→←上司はカキ氷を御所望3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す