教師失格【Sho.s】 (ページ42)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:220,131 hit

◇42◇ ページ42

「あ、智くんだ」

･

職員室の帰り道

先生が中庭の見える窓の前で立ち止まり、私も足を止めて窓の外を見る。

･

『カンナ、ちゃん・・・？』

智の前にカンナちゃんが立っていて、ハッ。っと息を呑んだ瞬間

･

２人の影が重なった。

･

こちらに背を向けている智の表情は見えない

智の背中に回ったカンナちゃんの片腕

智の後頭部に添えられたカンナちゃんのもう片方の手

智とカンナちゃんがキスをしているのは、一目瞭然で

･

『・・・・・・っ』

すぐそこまで溢れたそれを抑えるように、下唇を噛む

･

･

「Aちゃん・・・」

『・・・はやくポスター仕上げちゃいましょう』

･

ふぅ、と息を吐いて胸を落ち着かせ

彼らに背を向けて足を動かした。

･

保健室に入って、ドアを閉めて

ぎゅっと目を閉じると

さっきの光景が瞼の裏に張り付いていて、頭から離れない。

･

これで、いいんだ。

これで、いい。

彼に好きな人ができたなら、それでいい。

こうなって当たり前だもの。

･

「Aちゃん・・・」

『これで、いいんです・・・』

想いとは裏腹に、涙が頬を伝った。

･

ねえ、どうしてかな

彼といると、先生のことばかりを想ってしまうのに

先生といると、彼のことで頭がいっぱいになるの

･

『せん、せ・・・？』

･

視界が真っ暗になったと思ったら、

いつしか私は先生の腕の中にいた。