教師失格【Sho.s】 (ページ35)

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◇35◇智side ページ35

智「どうぞ」

『お邪魔します・・・』

智「二階の突き当たりの部屋、行ってて？飲みモンとってくる」

『うん、ありがと・・・』

･

彼女を先に俺の部屋に行かせて、俺は一階のキッチンに、飲み物を取りに行く。

智「ふぅ・・・」

今から起こるであろうコトを想像して

カラッカラになった喉を潤すためにミネラルウォーターをがぶ飲みした。

･

お盆に菓子と紙パックのジュースを乗せて、二階に上がる。

智「ふぅ・・・」

もう一度息を吸って、吐いて、ドアを開けて

智「お待たせ」

平然を装って彼女の隣に座った。

･

『いただきます』

緊張しているのか、正座をした彼女が、両手でイチゴオーレのパックを握りしめながらストローをくわえる。

智「この前さ、母ちゃんと姉ちゃんが、イチゴオーレかミックスオーレかでケンカしてたの」

『ええ！笑』

智「でね、智はどっち！ってなんか俺まで巻き込まれちゃってさ、もう大変。笑」

『智の家族、楽しそうね･笑』

智「また紹介するわ･笑」

『ウン』

･

トン。と、彼女が紙パックをお盆に戻す。

沈黙が続いて、なにか話題を・・・って考えたけど思いつかなくて

足が痺れて態勢を変えたときに触れた彼女の足に

これでもかってほど全神経が集中した。

･

智「・・・・・・A」

彼女の名を告げる俺の声は、自分でも驚くほど低くて

『・・・ん？』

彼女の短なその返事が、微かに震えていることに気付く。

･

顔を上げた彼女の肩に触れ

短く唇を重ねた。

･

智「A・・・」

もう一度、彼女の名を呼ぶ。

･

大丈夫。落ち着け。って暗示をかけるように繰り返しても

手の震えが止まらない。