教師失格【Sho.s】 (ページ2)

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「ゆく河の流れは絶えずして、しかもとのみずにあらず。

鴨長明が建暦二年に書いたとされる、ある随筆の有名な一文です。」

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大好きな大好きな先生が、教卓に立って黒板にはれた資料を指す。

今日もかっこいいなあってチラチラ先生を見ながら、私はノートにシャーペンを滑らせる。

〈好きなところ

・かっこいいところ
・優しいところ
・子供みたいな笑顔
・生徒をいつも理解しようとしてくれること
・低くて甘い声
・少し撫で〉

「御坂さん」

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あっ、と思って顔を上げると、少し眉を下げた困り顔の先生。

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「題名はなんですか？」

『えっと、えっと』

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真っ白な頭のなか

わからなくって先生に助けを求めると、

困ったように笑った先生が、口をパクパク動かした

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『お、う、ど、う、ひ？』

違う違う。って首を振り、もう一度

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『ほ、う、ど、う、じ？

あ！報道陣！』

「ちがうわっ！笑」

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私の答えと先生のツッコミに笑いが起こる。

「大野くん、助けてあげてください」

隣の席の智が、まさか自分に振られるとは思っていなかったのか、ビクッと肩を震わせた。

コロン。と色鉛筆が机から落ちる。

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「また絵描いてたでしょ」

智「んふふ」

「んふふじゃありません。答えはなんですか。」

智「うらしまたろう？」

「竜宮城は出てきません」

智「あ、わかった。」

「なんですか」

「ロミオとヘンゼル」

『ちがうよ～！ロミオとエンゼルだよ』

「ジュリエット・・・・」

智「エンゼルクリームってドーナツじゃんか。ヘンゼルだよ。」

『ヘンゼルってヘーゼルナッツじゃない！』

智「美味いよね～」

『美味しいよね～』

智「で、翔ちゃんなんの問題だっけ？」

「・・・・・答えは方丈記です」

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書きかけだった〈少し撫で〉を消して、〈困った時にすごく撫でる肩〉って書き直した。