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すっかり馴染んだ無垢の木椅子に座り、ティーポットにお湯を入れて温める。
「ジョゼ、」
「っ、君その怪我…!」
そういえば今日、と流れるはずだった言葉はジョゼフがガタリと立ち上がったことで掻き消された。
なんだなんだ。怪我?
焦った様子の彼にぐいと引き寄せられて、ベッドに座るよう指示を受ける。
大人しく座れば取り出される救急箱。跪いたジョゼフの指が優しく私の右手を掴んだ。
ひっくり返されて、手首の部分。
「ここ、ざっくり裂けてる」
あー、これ…目をそらしたのはほぼ反射だった。
暴れる傭兵を縛るとかにトゲでぐっさりやった時の。
荘園に帰ってコレ、ということは、ゲーム中はもっと酷かったのか。暗くてよく見えなかったからな。あまり痛みを感じなかったのはアドレナリンだろう。
目を伏せたジョゼフが反対の手で私の頬を包む。すり、と親指で目元を撫でられて、そのくすぐったさに目を細めた。
「…心当たりがあるようだね。何故最初に言わなかった?」
「……ほら、私達の身体はすぐに治るし、いいかなって…それに、お茶の準備をしてくれていたから」
「今更気遣うような仲でもないでしょう。それで?誰にやられたんだ」
静かな怒気を孕んだ低い声、不機嫌そうに顰められた柳眉。
こうなるから嫌だったんです、なんて言えるわけがない。
以前私が撃たれた後のゲームで空軍の子が真っ先にいたぶられたように、彼は私怨をゲームに持ち込むことに一切の抵抗がない。
が、こちらとしては散々生前お世話になった子たちである。お互い様な部分もあるし、手酷い仕打ちを受けたって多少は看過したい。
まあ確かに?痛い思いは嫌だけども。
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作者名:Ash | 作成日時:2020年2月7日 2時