それは枷のような / リッパー ページ1
夢主ハンター
「思うに、」
かしゃん、かしゃん。大きな鉄の爪で小指から順にテーブルを叩いていたリッパーが、ひとつ声を出して口を噤んだ。
聞こえるのは、已然続いている彼の爪の音と呼吸音だけ。頬杖をついている彼の右手も、不機嫌そうにリズムを刻んでいる。
「最近の貴方はあの写真家と仲が良すぎる」
違うかい?とばかりに顔を覗き込まれ、少しだけ目が泳いだ。
キラーの皆は、私にとても良くしてくれる。それこそ、おはようからおやすみまで。
荘園の“鬼役”として呼ばれてから、酷く長い時間を過ごしているが、その間で不自由をしたことはない。
私が困っていれば必ず誰かが手を差し伸べてくれたし、機嫌が悪いときだって(総じて皆理由について言及しないが、おそらくは完全敗北した、のようなものだろう)八つ当たりを受ける、なんてことはなかった。
昨今において類稀な優しさである。
なかでも、特別優しく、特別紳士的でーー特別扱いが難しいのが、今現在私に不機嫌さを隠そうともしない似非紳士だ。
荘園で生活している者のなかで群を抜いて気に入られていると言えば聞こえは良いが、その実、この男のそれは執着である。
離れていても燃え上がるのが恋、多少の距離も耐えられないのが執着、とはよく言ったもので、彼は私が自分の知らない場所で他の誰かと(自分が定めている規定以上に)深く交流していることが耐えられないらしい。
つまり、この場合。私がジョセフと彼の許容範囲を超える接触をしたことになる…のだが。
最近ジョゼフと特筆して仲良い、って言われるようなことした?何のことだ?お茶会…はいつもしてるし、ああ、もしかして。
伏せていた目線を上げると、長い足を組み直した男の顔がぐっと近づいてきた。仮面の奥で光が細められている。
「…おや?自覚がおありのようだ」
鼻歌でも歌うように軽く発せられた言葉。
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作者名:Ash | 作成日時:2020年2月7日 2時