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「すいません…送ってもらって…」
『気にしないでいいよ。チョン君、こっちに引っ越してきたばかりなんだね』
「はい…。休日にこの辺りを散策しようと思って出掛けたんですけど、まさか迷子になるとは…。ここで先輩に出会えて良かったです」
お願いがあるんです、と言われた時にはなんのお願いと思ってたら。
まさか最寄りの駅まで連れて行って下さいだった。
駅までの道すがら、チョン君は色々な事を話してくれた。
仕事では控えな印象だったけど、話し好きなのか話題に困らない。
「俺…イ先輩が指導係でよかったです」
『どうして？』
「話やすいですし、仕事も丁寧に教えてくれるし。何より、人気のキム先輩やパク先輩と友達だなんて。俺も…話に混ぜてくれるかなって少し期待してるんです」
『テヒョン達と話してみたかったの？』
「はい！あ、その…二人に憧れてるんです」
そんなこと聞かされたら、テヒョンもジミン君もチョン君のことすごく可愛がりそう。二人とも面倒みいいし、何よりチョン君いい子そうだから。
話してみるとその人柄がわかる。
時々笑う表情は、あどけなくて可愛い。
「先輩、あの人よかったんですか？」
『ジンさんのこと？』
「自分で彼氏って言ってましたけど…」
『彼氏ではないんだけどね…。ジンさんがいたんじゃチョン君緊張するかなと思って』
「でも、俺と先輩が二人きりで公園出る時、あの人膝抱えて拗ねてましたよ。しかも俺のことめちゃくちゃ睨んで、背中に殺気を感じました」
大げさ、って言えない。
あえてジンさんの方を振り向かないようにしてたけど。
今頃、アパートでどうしてるんだろう。
「じゃあ、俺はここで。先輩ありがとうございました」
『うん。また会社でね』
ピコン、とカトクを知らせる通知音。
駅の中へと歩いて行くチョン君の背中を見送り、通知をタップする。
『え…』
テヒョンから送られてきた文字。
そこには、「ジンさんが倒れた」とその言葉だけ。
倒れたって…。
私と別れた後に何があったのか。
さっきまで隣にいて、話していたばかりなのに。
返信を送ることも忘れ、私はアパートを目指して走り出した。
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作者名：bluemoon
| 作成日時：2021年3月7日 21時
